合格体験記 (佐藤 裕)

2011/04/01

日本語教師を志し、日本語教育能力検定試験にチャレンジしようと思い立ったのは2010年春のことでした。2010年の試験も受験しましたが、準備期間も短く、合格には至りませんでした。

2011年1月期からアークの420時間講座を受講しながら、本腰を入れて試験のための勉強を進めました。多くの方がそうだと思いますが、最初に出題範囲の広さに、合格までの道のりの遠さを感じてしまうと思います。しかし、範囲が広いということは自分の得意科目が必ずその中にあるということでもあるわけです。試験の鉄則でもありますが、得意科目を固め、苦手科目の対策をすることで効率よく点数を伸ばすことができるのではないでしょうか。私の場合、まさに、アークの授業で得意科目を固め、初めて学ぶ科目や苦手科目の強化をするといってもよいくらいでした。夏には対策講座も受講し、今年こそはと思いつつ試験に向けて万全の態勢を取っていたつもりでした。

しかし、また今年も不合格だったらどうしようかという不安がぬぐいきれません。なぜなら、試験というものには時間制限があり、いくら理解している内容が問題として出てきたとしても、時間内に答案用紙(マークシート)に書かなければ点数にはならない、という冷徹な事実があるからです。正味試験時間240分の長丁場の中で、自分の知識となったものを解答にしていくことができなければならないので、「アウトプット」の練習が必要だと感じました。

どのように練習したかというと、例えば、「会議で話をしても聞いている奴は3割しかいない」と嘆く(この話は結構もっともらしく流布されているようです)会社の上司に対して、「3割しか聞いていないのではなく、一日経つと7割の内容を忘れるのですよ」とエビングハウスの忘却曲線を持ち出して説明するなどです。人に話す、何か文章を寄稿する、となるといい加減にはできないのでいい勉強になったと思います。

他方、検定試験には聴解問題があります。友人に英語音声学者がいて、音声は比較的なじみのある分野だったことも幸いしましたが、聴解問題は私の得意分野でした。聴解の練習をすることによってどの程度の効果が上がるかは個人差が大きいと思いますが、聴解(検定試験の問題II)で得点を挙げるのに重要なのは、集中力を切らさないことに尽きると思います。考え込んでしまうと解答用紙にマークする時間すらなくなってしまうので、1問や2問は捨ててしまってもいいくらいのつもりで臨んだ方が点数を取れるかもしれません。試験本番では目標の点数を取れましたが、聴解問題が終了したときは結構な疲労感を感じました。

自身であれが役に立った、ということがいくつかあります。一つ目は新聞をよく読むこと。政府の国際的政策は日本語教育に影響を与えます。さらに、経済状況の変化にも敏感でなければなりません。私は仕事柄アジア地域の政治・経済記事を日常的に読む必要があったので、改めて心がけるという必要はありませんでしたが、普段新聞を読む機会のなかった方は早目に習慣づける必要があるかと思います。二つ目は外国語の学習です。4年ほど前から、週に2~3時間ある外国語のクラスに通っていたのですが、学習者の立場に置かれる体験、教授法などを実感として捉える、日本語と異なる音韻体系や文法を一度でも経験しておく、といったことはことのほか役に立ったと感じています。習い事は時間とお金のかかるものですので余裕のある方にしかおすすめできませんが、学校英語以外に自発的に外国語学習をしてみることは教師人生には必ずプラスになるものだと思います。

さて、今までの人生で資格試験をいくつも受験してきたのですが、この検定試験は免許というわけではありません。合格したからと言って手放しで喜べるというものではありません。よき教師となるために、合格してからも勉強の日々が続きます。まさにそのことを痛感しながら合格後の日々を過ごしているところです。お世話になった先生方に報いるためにも、さらに努力を重ねて行きたいと思います。

佐藤 裕さん

日本語教育能力検定試験
第25回 平成23年度 合格