試験勉強に燃え尽きて… (川勝 好子)

2011/04/01

試験が終わった直後は、疲労感と脱力感のみが残っていました。苦労して覚えたことの1、2割程度しか、試験には出題されなかったのでは…というような気がしました。充実感や手応えはあまりなく、合格する確率も、しない確率も半々…という感触でしたが、試験勉強に燃え尽き、解答速報を確認する気力すら残っていませんでした。

それでも日が経つにつれて、少しずつ前向きになり、2011年の残り2カ月はのんびり過ごすけれども、もし試験が不合格だったら、年明けからまたがんばろうと思い始めました。そんな中、合格の通知を受け取りました。苦労して覚えたことの1、2割しか出題されなかったようにも思いましたが、「努力したことが試験結果に反映されたのかも」とうれしく感じる一方、「あれだけ試験に自信がなかったのだから、自分はまだまだ。これからも勉強し続けなければ…」と気持ちを引き締めました。

2010年12月まで、私は中国系の銀行の東京支店で、資金取引や為替ディーリングの仕事をしていました。学生時代は本を読むのが好きで、速読術も学んだことがありましたが、資金取引の仕事をするようになってからは、時間的にも精神的にも本を読む余裕はありませんでした。金融危機以降、金融市場の荒波にもまれ、本店からのプレッシャーを感じつつ、有給休暇を1日も消化することなく、毎日夜遅くまで、時には土日も出勤し、仕事に明け暮れる日々でした。

ゴールがないように思われる奮闘の日々の中、ふと、自分が費やしているこのエネルギーを、人のために尽くしたら社会貢献になるのでは…と思い始めました。40歳という年齢の節目を迎えていたこともあり、かねてより興味のあった日本語教師の道を歩むべく、2011年2月末日付けの退職を決意しました。そして2011年1月より、40日の有給休暇消化に入ると同時に、アークの420時間養成講座の受講を始めました。日本語教育能力検定試験受験も、すでにそのころから念頭にありましたが、1月期(1月~3月)や4月期(4~6月)は理論や実技の授業を消化することで手一杯になり、試験対策を意識した勉強を始めたのは、6月末以降でした。

7月期(7~9月)は池田先生の検定演習科を受講しました。検定演習科や、須田先生の検定に関する各セミナーへの参加を通じ分かったことは、まず基礎力を身につけること、そして長時間、集中して問題を解く「持久力」を養うことの2点が、検定合格のカギとなるということです。

検定試験は問題数が多く、中には誰もが知らないような専門的なことも出題されます。そのような問題は皆ができないので、合否に影響はなく、基礎力を身につけた人だけが解ける問題を落とさないことが重要だと実感しました。基礎力というのは、毎回必ず出題される、文法や音韻・音声、学習者の誤用分析などの問題が解けるということです。私自身、文法や音韻・音声は決して得意ではなかったので、優先して勉強しました。特に試験Ⅱの聴解問題については、6月の終わりごろから10月の試験前日まで、毎日30~40分、CDを聞き、訓練しました。そのおかげで、9月の模擬試験では、試験Ⅲの成績があまりよくなかったのにもかかわらず、試験ⅠとⅡの成績が試験Ⅲをカバーし、総合順位を上げることができました。

検定試験は朝から夕方まで、長時間に渡り、集中して数多くの問題を解かなくてはなりません。私はいつもじっくり考えてから解答するというタイプなので、時間が足りないのでは、という心配がありました。また、以前の仕事であった、資金や為替取引が短い時間に集中して行うものであったため、長時間に渡り集中力を持続させることに苦手意識がありました。そのため、過去5年の検定試験問題や9月に行った模擬試験を3回、時間を測りながら解きました。

検定対策に使用した参考書、問題集、その他書籍、ウェブサイトなどは下記の通りです。

★6月末(もしくは7月)から試験直前まで、何度か繰り返し使用したもの

  ・検定演習科(アークアカデミー)・配布資料一式
  ・「新合格水準日本語教育能力検定試験用語集」アークアカデミー 編 凡人社
  ・「新合格水準日本語教育能力検定試験問題集」アークアカデミー 編 凡人社
  ・「日本語教育能力検定試験 聴解・音声特訓プログラム」アークアカデミー 編 三修社
  ・「日本語教育教科書 日本語教育能力検定試験 完全攻略ガイド」ヒューマンアカデミー 翔泳社
  ・「月刊日本語 2011年7月」(アルク)の「聴解模擬試験」CD
  ・ 平成18~22年日本語教育能力検定試験の試験Ⅱ聴解CD

★基礎固めに使用したもの

・420時間総合コース(アークアカデミー)の各理論講座のテキスト、及び配布資料
・「文法の時間」村田美穂子 編 至文堂

★9月から試験直前まで使用したもの

・「新編 一問一答形式による日本語教育能力検定 全重要語チェック集」北村弘明 著 双文社出版
・「新しい国語表記ハンドブック【第六版】」三省堂編修所 編 三省堂
・「改定常用漢字表 平成22年6月7日 文化審議会答申」
・「敬語の指針 平成19年2月2日 文化審議会答申」
・文化庁ウェブサイト 「国語施策 日本語教育」の「国語に関する世論調査」など
・国際交流基金ウェブサイト 「日本語教育」
・総務省ウェブサイト 「地域の国際化」
・文部科学省ウェブサイト 「海外子女教育、帰国・外国人児童生徒教育等に関するホームページ」「留学生30万人計画骨子の策定について」など
・アジア人財資金構想ウェブサイト
・独立行政法人日本学生支援機構ウェブサイト 「日本留学試験」
・日本語能力試験ウェブサイト
・「日本の大学への留学サイト グローバル30」ウェブサイト など

★一通り読んだ書籍

・「日本語 新版 (上)(下)」金田一春彦 著 岩波新書
・「日本語という外国語」荒川洋平 著 講談社現代新書
・「ことばと文化」鈴木孝夫 著 岩波新書
・「日本語教のすすめ」鈴木孝夫 著 新潮新書
・「日本語ウォッチング」井上史雄 著 岩波新書
・「新しい日本語の予習法」金田一秀穂 著 角川書店
・「かなり気がかりな日本語」野口恵子 著 集英社新書
・「外国人とのコミュニケーション」J.V.ネウストプニー 著 岩波新書
・「日本語文法の発想」森田良行 著 ひつじ書房

約4カ月弱に及ぶ試験勉強において役立ったことは、検定演習科の講義で、池田先生から勉強の仕方をお聞きしたことです。いろいろご指導いただきましたが、特に印象に残っていることは、繰り返し音読することにより、頭に刻み込むことです。勉強に集中できないときなどは、検定演習科で配布された問題や検定過去問題などに出題された文章を5回、音読しました(池田先生が20代、30代の方は2、3回で十分ですが、40代の方は4、5回音読が必要とおっしゃっていたので…)。

私は以前の仕事柄、まとまった日本語の文章を読むことから、何年も遠ざかっていたのですが、音読することにより、文章をより深く理解できるようになったと思います。また、アクセント聞き取り問題を間違えたときは、正解のアクセントを「タタタタ…」と声に出したあと、選択肢の正解を読み上げるというのを、30セットするように、と言われました。私はそれにプラスして、正解のアクセントの音階を「ドミミドミド…」というように読み上げて、高低を意識しました。それも同じく30回続けた後、最後に自分が間違えたアクセントを読み上げ、正解との違いを認識しました。

40代になると、10代、20代のころの記憶力はないんだなあ…とあらためて痛感した日々でした。1月期、4月期の理論の授業で学んだことも、7月期にはすっかり忘れていて、新鮮な思いで勉強したこともありました。池田先生がおっしゃっていたように、覚えにくいことはひたすら声に出して覚え、それでも覚えられないときは、書いて覚えました。4カ月弱、中だるみしたこともありましたが、検定演習科などで、同じ目標を持ち頑張っている仲間から刺激を受けたことは、私の原動力になったと思います。

試験が終わった後はしばらく放心状態でしたが、最近は、試験対策で丸覚えした日本語研究に携わった先人たちの名前を思い返し、その先人たちの著書を実際に読まなければ…と思うようになりました。試験に合格してゴール、というのではなく、試験は一つの通過点だと思います。日本語教師を目指して1年、まだまだ学ぶべきことはたくさんあります。この体験記の題名を「試験勉強に燃え尽きて…」としましたが、燃え尽きている場合ではなく、これからさらに知識を蓄え、学んだことを実践の場で生かさなくては、と決意を新たにしています。

川勝 好子さん

日本語教育能力検定試験
第25回 平成23年度 合格