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第4号 後編 ちょっとマテ?まあまあゆっくりしテレレ? パラグアイ文化に学ぶ隠れた熱中症対策?

2011/08/24

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市川 伴武 先生
パラグアイ ピラポ市
(JICA派遣)

男・日本語教師 パラグアイで『(いき) 』る! 第4号 後編
~ちょっとマテ?まあまあゆっくりしテレレ?
   パラグアイ文化に学ぶ隠れた熱中症対策? ~
 

前編を読む

■テレレ&マテの飲み方

飲み方はグアンパ(コップ)の7~8分目くらいまで、ジェルバ(Yerba)という細かく砕かれた茶葉を入れます。そこにボンビージャ(ストロー)を刺し、テルモ(水筒)から水、またはお湯を注ぎ、ボンビージャ(ストロー)で吸います。一回に飲む量はほんの少しです。

そして、ここでマテやテレレを飲むときに一番大切なことは、「回し飲み」をすることなんです。この「回し飲み」こそが、テレレやマテをパラグアイの文化と言わしめる所以だと私は思っています。一人が水やお湯が入ったテルモを持って、注ぎ役&コップ渡し役をやります。一人が飲み終わったら、また注いで次の人に渡します。おんなじボンビージャ(ストロー)でみんな飲むのです。「やだっ、ちょっと、それって、間接キッスじゃないの!」なあんてことを私たちは考えてしまいますが、決してストローの飲み口を手で拭いたりしてはいけません。むしろ失礼になってしまうかもしれません。同じ飲み物を同じストローを通して飲む。これこそがテレレ&マテの正式な飲み方であり、仲間の証なのです。そして、それをゆっくりと回しながら、会話を楽しむというのがパラグアイ式コミュニケーションなのです。日本の「飲みニケーション」より、よっぽど健全だと思いませんか(笑)?ここパラグアイでは老若男女問わず、テレレやマテを回し飲みするのです。これはこちらに移住している日系人のみなさんも同じです。

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バスの中でもテレレを飲みます。

パラグアイ人はどこに行くにも、テレレ&マテセットを持っていきます。かばんは持っていなくても、そのセットだけは必ず持っているのです。それはたとえ会議中であろうとも回ってきます。朝起きても、バスの中でも、仕事中でも、お昼休みでも、仕事帰りでも、お酒を飲んだ後でも、寝る前でも、とにかく回ってきます。学校の運動会などがあった日には全ての家庭がそのセットを持ってきています。私もすっかりいまやこのテレレ&マテ文化の虜になってしまい、毎朝事務所に出勤したときや、昼休みや仕事終わりには他のスタッフや友人と「回し飲み」をしながら、会話をしています。

■テレレ&マテの功罪

今まで述べてきたように、このテレレ&マテ文化というのは健康面からも人間関係面からもパラグアイ社会にとって、なくてはならないものです。他の南米諸国にもこの文化があるようですが、パラグアイほど顕著ではありません。パラグアイのホテルでは、水にはお金を支払いますが、テレレを頼むとタダで出てくるほどです。この文化によって、家族や仲間との時間をゆっくりと楽しむことができているようです。

この「同じ飲み物を同じストローでゆっくり少しずつ回し飲み」文化は忙しい日本人にとって、実はとても必要なことなのかもしれません。冒頭の熱中症の話もそうですが、ここパラグアイでは暑い日にはどこに行くにも、テレレセットを持っていきます。よく熱中症対策として言われるのは「少量をこまめに」ですよね。まさにこのテレレはそれなのです。日本の夏に一人でペットボトルを買うと、どうしてもガブガブ飲んでしまったり、すぐにぬるくなってしまったりと熱中症対策としてはあまりよくなさそうです。テレレの場合、テルモから注ぐ水はいつも冷たく、しかも体にいい茶葉がたくさん、それを少量ずつ、友人と会話を楽しみながら飲み、なおかつ自然と熱中症対策にもなってしまう。なんて素敵な習慣じゃありませんか!個人的には日本に帰っても、このテレレ&マテ習慣は続けたいと思うほど、大好きな習慣です。

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露天にはグアンパやテルモがずらり。

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パラグアイでは犬もテレレを飲む?

しかし、反面、ここパラグアイでは仕事中もかまわず飲み続けるため、メリハリがつかないというマイナス部分もあります。平日、いろいろな店を覗くと、どこでも、テレレやマテをチューチューしています。しばらくして、その店をまた覗いてみると、まだ飽きもせずチューチューしています。「いつ仕事してるんですか?」と問いたくなるときが多々あります。パラグアイの役所や病院などに勤めている同じ協力隊ボランティアなどに話を聞くと、「1日中職場でずっとテレレしてるだけの人がたくさんいるよ」と言っていました。どの会社の事務所にも、日本のお茶セットのように置いてあり、少量ずつゆっくり飲むので、際限なく飲めてしまいます。ゆっくりそれを楽しむのはいいですが、職場ではメリハリをつけた楽しみ方が大切ですね!

今は日本でもテレレやマテ用の茶葉が手に入るようです。日本のみなさんも家族や友人と「ゆっくり回し飲み」してみてはいかがでしょうか。