大人の勉強 3ヶ条 (酒井 真一)

2012/04/01

はじめに
2011年の盆休み、自宅でぼんやり日本語教育をPC検索していると、たまたまアークアカデミーのWEBサイトにたどり着いた。渋谷校が勤務先から近かったので、さっそく授業見学をして420時間総合コースの申込手続きを行った。勉強を始めると日本語教育の裾野が広く、また奥深いものだとわかってきた。第二の人生に備えてチャンスがあれば学問の世界に入ろうと考えていた私は、進めていた政策関係の勉強を棚上げし、日本語教育を究めるべく大学院(以下「院」という。)受験を決意した。決意はさらにエスカレートし、年末には退職。2012年正月から ①420時間講座の終了、②検定試験合格、③院入学の3つを目指した。大人になってからの勉強は若いころとちょっと違うところがある。以下は、検定試験の勉強の感想めいたものを、“大人の勉強”として3つにまとめたものである。

第1条 モチベーションを維持する
まず1月から5月までは、院入試の勉強と教師養成講座の2本で検定試験の勉強を兼ねることにした。日本語教育には全くの門外漢なので、最大の課題であった研究テーマ策定に向けて、過去の修士論文と参考文献の閲覧を続けた。母校の大学図書館に通い文献に読みふけり、院入試の過去問の解答練習を続け、夜はアークの講座に出席した。日中、人と話すことがほとんどなかったので、アークで先生や同級生と言葉を交わすのは本当に楽しかった。帰宅後や休日は、妻や子供たちとできるだけ会話するように努めた。なにぶん生まれて初めての浪人生活、モチベーションの維持が最大の課題だった。アーク同級生や家族との触れ合いは、自分の殻に閉じこもりがちな勉強生活に解放感を与えてくれた。

長く生きてきた人は、「いまさら勉強など」という心理状態に陥りがちである。しかしそう思ったら、それでお終いなのである。大人は自分のこころをコントロールする能力に長けている。「勉強は楽しい、勉強は始めるのに遅すぎることはない」と自らを導くことができるはずだ。人と会話する、ボランティア活動をする、映画を観る、音楽を聴く、旅行をする。こういった交流や趣味において、私は日本語教育とのつながりを多くみつけることができ、とても面白かった。モチベーションの維持が、大人の勉強の第一歩である。

第2条 最低限の勉強量を確保する

6月に院に首尾よく合格し、いよいよ検定試験に専念できるかと思ったが、アークの教壇実習に意外に時間をとられ、本格的な勉強を始めることはできなかった。とはいえ実習は勉強の励みになり、メンバーと授業終了後、飲み会などで憂さ晴らしができて愉快であった。実習終了後の7月上旬は、自分へご褒美と称して台湾を一周するなど、まだ試験勉強開始を先延ばしにしている状態であった。

アーク検定演習科については費用面で少し悩んだが、仲間が参加することと7月から理論の授業が少なくなり出不精になってはいけないと思い受講を決めた。演習問題や資料は大変詳細で受験に直結しているし、先生方の熱心な指導で弱点が見えてくる。このように本格的な試験勉強をしたのは、検定演習科と重なる7月から10月の4ヵ月である。

私は演習科に熱心に出席した方だと思うが、気持ちとしてはどちらかというとペースメーカーとして利用した。演習科の授業終了後、週1回、仲間と勉強会をもったことも効果があった。さらにアークの仲間が合格者の先輩方も交えWEB掲示板を立ち上げてくれ、そこでアドバイスを受け、意見交換を行ったことも有効だった。演習科を土台にしてこれらをペースメーカーとしたことによって、雑念などでとかく波が生じがちな大人の勉強において、最低限の勉強量を確保することができた。

第3条 地力を養う
1月から5月に院入試の論述問題を解いたこともあって、検定試験の記述対策は行わなかった。記述問題に関しては変則的な受験勉強となったが、結果としては妥当だった。

また、アークの授業や教科書・プリントは基礎知識として十分である。予習・復習は完全にはできなかったが、出席するだけでも試験対策としては相当の効果がある。不明点について質疑応答ができること、参考文献を紹介してもらえることは通学の最大のメリットである。出席を続け、有用な情報をキャッチすることがポイントである。

こうした一夜漬けでない積み上げは、知らないうちに地力を養ってくれたのではないか。特にアークの授業で紹介される日本語関係の文献はお薦めだ。日本語に対する感覚や見方を醸成してくれる。近年の検定試験の傾向を見ると、短期の準備では対処しにくくなってきているのがわかる。備えあれば憂いなし。大人の試験勉強は日ごろ地力を養い、本番でリスクを回避することがポイントである。今年度は試験Ⅰが難化し、まさしく危機管理が問われたと感じている。

おわりに
検定試験合格を含めた3つの目標を達成できたのは、第一に先生、先輩、仲間との交流の中でモチベーションを維持できたからである。それに加えて、最低限の勉強量を確保し地力を養うために、“大人の勉強”を意識的に続けることができたからである。これらは決して精神論ではなく、意識化とその実践例である。私の試験対策の総括は以上である。拙文が少しでもみなさんの参考になれば幸いである。最後になるが、私を後押ししてくれた方々にこの場をお借りしてお礼申し上げたい。どうもありがとうございました。

酒井 真一さん

日本語教育能力検定試験
第26回 平成24年度 合格