No.11 教師の親ゴコロ

2015/08/18

2ヵ月ほど前、うちの隣のコンビニに留学生らしきアルバイトが入った。南アジア出身と思われる男の子で、すぐ近くに日本語学校があることから、そこに通っている留学生だと、私は勝手に決めつけている。


今でこそかなり接客にも慣れてきたが、始めたばかりの頃の彼は、他人の私まで「大丈夫かな、この子」と心配になるくらい、日本語も接客も不慣れな印象だった。ゆっくり&はっきり話す私とのコミュニケーションさえままならず、内心「もしや、実習中にクビになってしまうんじゃないか」と、そのあどけない顔を見るたびに案じていたのである。


しかし、彼は今もその店にいる。いるどころか、イキイキと働いている。ある時など、夕方のかなり忙しい時間帯を、一人でテキパキこなしていた。そんな姿に私もつい嬉しくなって、おつりをもらう時には「どうも!」ということばに、「がんばって」のエールを託していたりする。


また、たまたま食事した店で、留学生らしきスタッフが注文を取りに来た時などにも、日本語教師のスイッチが入る(らしい)。無意識に、スタッフが聞き取りやすいように、注文を間違えないように、ティーチャ―トークになっていたようだ。友人に「いま、話し方が日本語教師になってたね」と指摘されてハッとした。教師の親ゴコロが顔を出していたとは、自分では気づかなかった。これも、立派な職業病の一つだろう。


留学生だけではない。新宿駅の宝くじ売場でのこと。中国の観光客らしき男女4人グループがその売場にやってきた。その中の一人の女性がスマホの画面を見せて、売場の人に何か聞いている。日本語は話せないが、どうも「吉祥寺へは何番線の電車に乗ればいいのか」ということらしい。しかし、売場の女性は「そこの窓口で聞いて。ま・ど・ぐ・ち」と日本語で繰り返すばかりで、当然ながら相手には全く通じていない。
そこで、本来は「部外者」である私が、つたない中国語で対応を買って出た。彼らが喜んでくれたのはもちろん、売場の女性にも「言葉が通じないし、困ってたの。ありがとう」と大いに感謝された。外国人と接することが日常である、日本語教師の本領発揮の一コマと言えるだろう。

 

だが、この話に「いいことをして、その時に買った宝くじが当選」などというオチはない。親ゴコロは見返りを求めない、が鉄則なのだから。

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