日本語教師エッセイ/No.43 ゆく人くる人 | 日本語教師養成講座のアークアカデミー

No.43 ゆく人くる人

2016/12/26

早いもので今年もあとわずか。世界各地で華やかにカウントダウン・イベントが開かれる。もっとも、私はやはり「カウントダウンより除夜の鐘」である。あの「ゴーン」という荘厳な音が、心にズッシリと響いてくる。しかし「『鐘の音がうるさい』という苦情を受けて、除夜の鐘をやめた」というお寺があると聞いた。何だかすごい時代になったものだ。


学生に年末年始の予定を尋ねてみると、休みに入ってすぐに一時帰国するという学生もいるが、「アルバイトです」と答える学生も多い。アルバイト先の日本人の多くが帰省するため、留学生がいつも以上の戦力となるのだ。大晦日はバイトで年越しという学生も。そんな彼らにも、どこかで除夜の鐘を聞いて、「ゆく年くる年」を感じてほしいものである。


ところで、日本語学校の卒業式は毎年3月に行われる。が、それとは別に、各学期が終わると同時に(または途中で)勉強を修了し、それぞれ学校を巣立っていく学生もいる。めでたく日本での就職を果たした者、完全帰国する者、また他の国に行く者、進む道はさまざま。帰国する場合の理由もさまざまだ。ある学生は親の意向で、ある学生はビザの関係で、またある学生は進学の夢破れて…。ここ数年、日本に「くる人」が増加している中、一方で、ここから「ゆく人」にちょっと思いを馳せてみたくなる。きっと年の瀬の「しみじみ感」がそうさせるのだろう。


個人的には、自分も納得して晴れやかな気持ちで「ゆく人」には、こちらも笑顔で送りたいと思う。だが、「本当は帰りたくないけれど、やむを得ず」と悲しそうな表情を浮かべる学生もいる。そういった「ゆく人」には、日本での留学生活を今後に生かして頑張ってくれることを願うのみだ。そして、やはり笑顔で明るく送ってあげたいものだと思う。


さて、師走の風物詩となった「今年の漢字」が決まった。今年は「金」が選ばれたが、発表前にあるクラスで今年の一字を予想させてみた。すると「変」と書いた二人以外は、「危」「震」「改」「乱」「薬」「魚」「農」など異なる漢字を予想。理由も「なるほど!」と思わせるものが多く感心した。残念ながら「金」と書いた学生はいなかったが、2位の「選」と予想した学生が一人。確かに「選挙」や「選手」が話題になった2016年だった。きたる2017年、みんなが「幸」の一年になりますように。