No.46 意外な同居生活

2017/02/13

2017年の1月期が始まってしばらく経つ。担当クラスのうち午前クラスは今までと同じだが、午後のクラスは全て私にとっては「初めまして」のメンバーとなった。ゆえに、初回授業の冒頭は、まずお互いの自己紹介から始めた。ごく簡単なものではあるが、やはり初めの印象が肝心だ。


さて、今期の自己紹介で最も印象に残ったのはある男子学生だった。趣味について質問していたのだが、やはり多いのは「漫画」「アニメ」「ゲーム」で、女子学生の場合はアイドルの熱狂的なファンというケースも。だが、その学生は笑顔で「趣味は動物を飼うことです」と答えた。いま住んでいる部屋でもペットを飼っているという。東京の賃貸物件の条件ではペットを飼うのは難しいかと思うが、以前にも「マンションで猫を飼っています」という学生がいた。私は今回も可愛い猫や小犬を思い浮かべつつ「何飼ってるの?」と聞いてみた。すると、その学生は満面の笑みで「ヤモリです」と答えた。私の頭の映像は、一瞬で猫と犬からヤモリにスイッチした。実は、私もヤモリと同居していたことがあるのだ。

 


ベトナムのアパートでのことだ。私がハノイに赴任した際、もう一人女性講師がいて二人同時に着任した。住まいとして提供されたアパートに着いたとき、二つの部屋から「好きなほうを」と言われて私が選んだのは、広くて天井の高いほうの部屋だった。なぜあのとき『舌切りすずめ』の教訓を思い出さなかったのだろうか。欲で大きなツヅラを選んでしまった私の部屋だけ、特典として天井にヤモリが棲んでいたのである。あるときは一匹で、また仲良く親子(らしき)三匹で、私の部屋の天井や壁を自由に動き回っていた。初めて天井にその姿を見つけたときはギョッとしたが、「家守」ゆえに大切にせねばと思いながら暮らしていた。


さて、その留学生の話。「先生、これです」と、彼はまるで彼女でも紹介するようにスマホの写真を見せてくれた。それは、私と同居していた種類とは明らかに違う、いかにも「トカゲ」といった風格ある立派な一匹だったが、彼は「可愛くて仕方ない」というように語る。ペットショップで買ったというそれは、彼のこの上ない癒しなのだろう。ちなみに、調べてみたら、ヤモリは爬虫類で、名前の似ている「イモリ(井守)」は両生類とのこと。恥ずかしながら知らなかった。動物の世界も奥が深い。


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