No.57 好久不見! | 日本語教師養成講座のアークアカデミー

No.57 好久不見!

2017/07/24

どんなにムシムシ暑くて過ごしにくくても、やはり「ニッポンの夏」が近づくとココロが躍る。それは、私にとって「再会の季節」だからかもしれない。ロシアで日本語を教えていたとき、派遣元の規定で日本に帰国し滞在できるのは年1回、派遣先の大学が完全に夏季休暇に入る7月初旬からの1か月半弱と決まっていた。1か月半というとけっこう余裕がありそうだが、その間に2週間ほどの研修や活動報告会が義務付けられ、さらに健康診断を受け、次の赴任に向けての準備など、やらなければならないことが山ほどあった。


さらに、その間に帰省もしなければ…というわけで、1年ぶりの日本でのんびりしている暇などなく、滞在中に効率よく友人たちと会うため、ロシアにいるときから予定を立て、メールで約束を取り付けておく。サクサクと音が聞こえそうなくらいの手際よいスケジューリングに、私はこのとき初めて、自分がマメな人間であることを知ったのである。今は昔、の話であるが。


こうして帰国した翌日、長年行きつけの美容院でカットしてもらうことから私の「ニッポンの夏」が始まる。やはり言葉が100パーセント通じ、私の髪質も好みを知ってくれている美容師さんは特別だ。大きな鏡の前に座って「お帰りなさい」と声をかけてもらうと、「ああ、帰ってきた」と実感したものだ。


そして、そこからは「再会スイッチ」全開となる。毎日、研修の合間を縫い、時にはランチ、お茶、晩ご飯とそれぞれ約束を入れるなどして、ロシア土産を渡しがてら、お互いの一年を報告し合う。あっという間に1か月半の「ニッポンの夏」は過ぎて、楽しい思い出を胸に再び任地の人となるのであった。


完全帰国して今年で11年。今でも、夏は再会の季節だ。まずは7月の初め、今年もロシアから友人が一時帰国した。彼女とは現地で日本語教師仲間として知り合ったのだが、住まいが近かったこともあり、カフェや私のアパートでおしゃべりを楽しんだものだ。現在も、ロシアの最新情報をいろいろ届けてくれる。たとえロシアと東京と場所は変わっても、いつまでも「お久しぶり」と笑顔で会って近況を報告しあえるという、本当にありがたい存在なのである。


ところで、タイトルの「好久不見!」は、中国語の「お久しぶり」である。台湾にいた頃から、この響きがなぜかとても好きで、日本でも友人たちには「お久しぶり」の代わりによく使っている。夏は、まだ始まったばかり。今年もたくさんの人に会い、笑顔で「好久不見!」と挨拶できたらいいなと思う。