海外での経験も豊富なベテラン教師が、日本語教師の日々をつづるエッセイ | 日本語教師養成講座のアークアカデミー

No.69 隔世の感

2018/01/16

昨年12月初旬、久しぶりに母校の大学を訪れた。所属していた登山サークルの45周年式典に出席するためである。キャンパス内には新しい建物も増え、記憶の中の風景とは少し変わってしまったが、正門を入ると、華やかにクリスマスのイルミネーションが施された2本のヒマラヤ杉が迎えてくれた。卒業して数十年経っていても、この光景はずっと変わらない。「ああ、帰ってきたな」という思いに、じわりと胸が熱くなった。


会場前では、サークル名を書いたボードで現役の学生がお出迎え。その姿と、大学生の頃の自分が重なる―ことは全くなかった。明らかに違うのだ。私が現役だった頃には、山岳部やワンダーフォーゲル部ほどではないものの、登山サークル=山男・山女の集まりで、主流であったテニスサークルなどとは一線を画していた気がする。だが、出迎えてくれた学生たちは爽やかなイケメン、可愛い女の子ばかりであった。まさに、隔世の感ありである。


式典には45年前の初代の先輩から現役生まで、実に幅広い年齢層の約150名が集合。立食スタイルなので自由に移動でき、主催者である学生たちが各テーブルを回ってくれた。最近よく言われる「今の若者は内向きだ」という話は果たして本当なのか、リサーチする絶好の機会である。たまたま近くにいた2年生の男子学生に、卒業後の進路を聞いてみた。すると「ホテルマンになります」と断言。しかも「台湾のホテルで働く、って決めているんです」と、具体的に台北にある最高級ホテルの名を挙げる。聞けば、旅行で訪れて泊まったホテルのサービスの素晴らしさに感動し、「働くならここで!」と決心したのだそうだ。ぜひ、いつかそのホテルで働く彼に再会してみたいものだ。


また「日本語教育に興味があります」という女子学生にも会えた。彼女も2年生で、春から1年間休学し、タイの大学で日本語教師のアシスタントをするのだと言う。このように、若者たちは決して内向きなわけではなく、むしろ海外を身近なものとして考え、将来をしっかり見据えているように思えた。


ところで、今回の「隔世の感」は、実は式典前にすでに確信していた。会場前で出迎えてくれた学生の案内ボードを見たときだ。その昔、我がサークルは「登山」のサークルであった。それがボードにははっきりと「アウトドア」サークルと書かれていたのである。なるほど。実際に若者たちを見て妙に納得。寒さより、時代の変化が身に染みた師走の日であった。