No.110 ザ・プロフェッショナル | 日本語教師養成講座のアークアカデミー
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No.110 ザ・プロフェッショナル

2019/09/24

先日、授業で「プロ(フェッショナル)」と「アマ(チュア)」について説明していたところ、学生から「プロとベテランは同じですか」という質問が出た。辞書による意味は、ざっと言えば、プロは「専門的なことを職業にしている人。それを収入としていること人」、ベテランは「長い経験を持ち、優れた技術をもっている人」ということになるだろうか。その違いを説明しながら、ふと、最近知り合ったばかりの人に「大ベテラン」と呼ばれたことを思い出した。


このエッセイコーナーのプロフィール欄にも「ベテラン教師」という言葉が使われているが、「大」を付けて呼ばれたのは初めてである。その話を姉にしたところ「ふーん、あなたって大ベテランなの?」と聞き返されてしまい、「うーん…なのかなぁ?」などと、堂々巡りのおかしなやり取りになってしまった。もちろん「大ベテラン」に特に深い意味はなく、経験年数などでそう言ってくれたのだというのはわかっているが、何だかとても気恥ずかしくなった。


ところで、日本語教育とはまったく関係ない話で申し訳ないが、「風呂栓」である。長年使ってきた風呂栓が劣化し、替えを求めて駅前の量販店に足を運んだ。家庭用品などのフロアでぐるぐると回ってみたが、浴室コーナーにそれは見当たらない。結局、現代人の頼みの綱である通販で購入することにした。当然ながら、排水部分のサイズもしっかり測った(つもりだ)が、届いてみると微妙に違う。しばらく工夫して使ってはいたものの、それにも限界がきた。


さてどうしようかと悩んだときに、一軒の金物屋さんが浮かんだ。小さな商店街に長年店を構えている金物屋さんだ。しかし、さほど大きく見えないその店に、果たして私が求める「風呂栓」はあるのか。結果は、あった。しかも、種類も豊富に。品揃えだけではない。対応してくれた経営者らしき女性の豊富な知識、よどみない説明により、いとも簡単に私の目的は果たされたのである。その女性の、下町にいそうなチャキチャキした話し方(イメージ)にも、惹きつけられるものがあった。恐るべし、街の金物屋さん。たかが風呂栓、されど風呂栓である。ひょんなことから、改めて「街のプロ」の存在を認識。これには、ちょっとした感動すら覚えた。


改めて「プロ」と「ベテラン」である。「プロ意識」はあるが「ベテラン意識」という言葉は聞いたことがない。勝手な解釈ながら、「ベテラン」には経験年数など客観的な意味合いが強いが、「プロ」は経験年数では計れない、自身の仕事へのプライドが大きく関係しているからだろう。どこかで「相手のどんな要望にも的確に応えるのがプロ」といった文を読んだことがある。それが条件ならば、私も「ベテラン」にふさわしい「プロ」を目指したいものである。