No.130 真夏のエール | 日本語教師養成講座のアークアカデミー

No.130 真夏のエール

2020/08/28

暑い暑いと愚痴をこぼしたところで、解消されることなどないのだが、それでもつい言わずにはいられない夏である。思えば、今年は長梅雨で比較的涼しい日が続き、「もしや冷夏?」という声もあった。が、ようやく梅雨が明けたと喜んだ直後にやってきた、だまし討ちのような暑さと湿気。しかも、夏前にさかんに言われていた「新型コロナウイルスは暑さに弱い」という噂を信じ、「この暑さでウイルスの感染力が弱まるなら、我慢しなければ」と、マスク必須で臨んだものの、裏切られた感がある。しみじみと、かつてない「ザ・忍耐」の夏だなと思う。


年を経るごとに、暑さによる心身のダメージを痛感しているが、さすがに今年は年齢に関係なく、学生たちもウンザリしているようだ。特に午後クラスの学生は、まさに灼熱の中を歩いてくるため、挨拶の前にまず「ふーっ、暑い、暑い!」と言いながら教室に入ってくる。もちろん、エアコンを効かせて一気に涼しくしてあげたいのだが、これまたウイルス対策で、まめに換気をしなければならず、窓を開ければモワーッと熱風が。あちらを立てれば…状態である。 


それにしても、この状況を乗り越えようとしている留学生たちは「すごい」に尽きる。コロナ禍の影響により、予定されていた夏の日本語関連の試験が中止となった。また、大学や専門学校の入試に関しても、例年のように明確なスケジュール通りには進んでいない。内心、さまざまな思いはあるのだろうが、それでも健気に毎日登校している。その姿を見ていて「今がんばっている留学生は、これから何があっても大丈夫。みなさんは、とても強い人たちです」、思わずこんな言葉が口をついて出た。学生たちは笑っていたが、これは私の心からのエールである。


ところで、しばらく対面授業のみの日々だったが、都内のウイルス感染者の増加に伴って、8月にオンライン授業が復活した。ただ、以前とは異なり、あくまで週1回ほどのペースである。私も午後クラスで2回だけオンライン授業を担当したのだが、たしかに灼熱の中を登校せずに済むのでありがたい。が、すっかり対面授業慣れしていた脳が、なかなかオンラインモードになってくれない。マスクは…いらない、メイクは…ぜったい必要、など指差し点検で準備しなければ何かミスをしそうで、ちょっとドキドキしてしまった。とりあえず、2回とも問題なく終わったが、やはり、たとえ炎天下を歩くとしても、「私は対面授業がいいな」と改めて思う。


一方、学生たちからは「もっとオンライン授業が多いほうがいい」という意見も多い。授業後、学生が「来週もオンラインですよね?」と、喜々として聞いてくる。「いいえ、来週は学校ですよ」と答えたときの、学生のガッカリした顔…。灼熱はあと少し。がんばれ、留学生。



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