「国際協力」 というボランティア活動 | 日本語教師養成講座のアークアカデミー

「国際協力」 というボランティア活動

2014/11/18

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信野 伸子さん

日本語教師養成講座
2002年卒業
JICA 青年海外協力隊事務局で
国内協力員として勤務

卒業生インタビュー

今は、JICA 青年海外協力隊事務局 国内グループ 啓発・社会還元チームに所属しています。私自身も青年海外協力隊員でした。派遣先はコスタリカです。この国は、もう何十年も前に憲法により軍隊保持を禁止しています。軍事費がない分、福祉や医療、教育に予算をあて、環境保護にも力を入れている自然の豊かな観光立国です。

私は、コスタリカで2番目に大きい国立大学で日本語を教えていました。いわゆる第二外国語のようなものです。協力隊には120ほどの職種があって、日本語教師はその中のひとつですが、同じ日本語教師といっても、世界の地域あるいは配属先の要請ごとに、その活動内容は大きく異なります。例えば、アジアでは、日本語教育が進学や就職に直接結びつきます。しかし、アフリカや、コスタリカのような中米では、日本語という異言語を学ぶことで視野を拡げ、それによって自国の文化や言語へ目を向けるきっかけづくりとしての役割が大きいのです。ですから、大学生の学習動機は、異文化・異言語への興味が主でした。彼らはとても関心をもって学んでくれましたよ。

コスタリカは、平和な美しい国である一方、開発途上国の常である、貧富の差が大きいというアンバランスな面ももっています。そんな中で、大学に通っていること自体が、かなり恵まれた境遇だといえます。おそらく私の学生の中には、これからコスタリカという国を担っていく人もいるでしょう。彼らの中に、私が行った日本語の授業が、なにがしかの記憶に残り、それが将来、日本とコスタリカの関係にプラスに働けば、その交流の架け橋のクギ一本ぐらいの役割を果たせれば、という気持ちで活動していました。

青年海外協力隊は、JICAの行うボランティア事業のひとつです。企業の一員として海外で働く場合、その企業を背負って経済活動をするわけですが、国のボランティアとして活動する場合は、行った先の開発途上国に貢献することが目的です。それを日本語教師としてどういう手段でやっていくか。コスタリカで暮らした2年間、そのことをずっと考えていました。

もともと、アークに入学する前から、青年海外協力隊で国際協力活動をしたいという、はっきりした動機があったんです。広島県出身ですので、もしかすると、子どものころ受けた平和教育や、国と国との紛争をなくしたいという願いが底辺にあって、いつしかそんな動機に姿を変えたのかもしれませんが、応募する直接のきっかけは、中国で協力隊員として活動していた人との出会いです。その人の話を聞いて、言葉や文化を外国人に伝えることが国際貢献になるというのが、とても新鮮に感じられました。

  • 現在、年間2千人以上が、青年海外協力隊員として外国で活動しており、その経験者を累計しますと、2万7千人を超えます。そういう方がどんどん活動で得たものを国内に還元していければいいな、と思います。日本語教師のみなさんの中にも、これから勉強を始められるみなさんの中にも、青年海外協力隊に興味を持っている方がいらっしゃるでしょう。みなさんの願いが叶い、協力隊員として2年間活動した後、また日本での生活に戻ってくるわけですから、協力隊の経験をどういったキャリアにしたいのか、それを今のうちにしっかり考えることも大切ですね。そうすれば、より青年海外協力隊を志す目標がはっきりしてくるのではないかと思います。例えば、中国では、高いレベルの日本語教育が求められ、私の行ったコスタリカのような国では、異文化紹介の色合いが濃くなるなど、活動内容や教授レベルが異なります。応募する際に、各国の日本語教師の要請内容をよく読み比べておくことをお勧めします。

    私にとって、協力隊で活動した2年間は、人生の大きな糧になっています。これから先、日本語教師の資格があるので、それを生かせればという気持ちはもちろんありますが、同時に何か人の役に立つことをしたい、という気持ちも強くあります。たまたま、国際協力という世界のドアノブをガチャっと開けた状態が 「今」 だと思うんですね。そのドアを大きく開けて進んでゆく手段を考えているところです。そこに、日本語教育という専門技術がうまく合致すればいいな、と思います。