No.51 近くて近い国 | 日本語教師養成講座のアークアカデミー

No.51 近くて近い国

2017/04/24

留学クラスが休みに入った3月中旬、久しぶりに韓国のソウルを訪れた。2年ぶりかと思いながらパスポートで確認すると、前回は2014年の2月。自分の感覚とは丸一年のギャップがあることに驚く。振り返ってみれば、初めて韓国を訪れたのは今から20年前のこと。姉夫婦が韓国の地方都市に赴任したのをきっかけに度々訪れるようになり、「近くて遠い国」から一気に「近くて近い国」になった。現地で知った韓国料理にも魅了され、何度足を運んでも、そのたびに新しい魅力に出会えるのも嬉しい。だが、韓国への旅はいつも姉と一緒で旅行中の会話も完全に姉頼りのため、私の韓国語は一向に上達しない。


3年ぶりのソウルでは、さまざまな変化に出会えて興味深かった。まず、街行く人のメイク。多数派というわけではないが、やや白めのファンデーションにくっきり眉毛、濃い口紅といったメイクの若い女性をよく見かけた。日本でブレイク中の女性芸人のイメージに似ていたが、それは気のせいかもしれない。メイクといえば、以前はメイクで日本人か韓国人かほぼ見当がついたものだが、その見分けが難しくなっていた。私見だが、その理由の一つは、女性のK-POPグループファンの日本の若者たちが、彼女たちのヘアスタイルやメイクに影響を受けているからではないかと思うのだが、果たして真相はどうだろうか。


また、若者の間で流行していたのが「民族衣装(ハンボク:韓服)を着てソウル市内の観光スポットを歩く」というもの。これはレンタル衣装らしいが、仁寺洞など観光エリアでは、海外からの観光客、韓国の女の子同士、そしてデートを楽しむ若いカップルなど実に多く見かけた。色とりどりの民族衣装はどこにいても目を引き、まさに春の街に彩りを添えているといった印象だった。


ところで、今回の旅には、以前の学生を訪ねるという目的もあった。その学生のクラスを担当したのはもう10年近く前になる。出身地が姉夫婦の赴任先と偶然にも同じだったことが縁で、彼がバイトしていた新大久保の韓国料理店に姉とよく足を運んだものだ。そして昨年帰国し、今はソウル近郊で居酒屋風の店を開いている。店名は漢字で『昭和』。店内は、日本から取り寄せたという昭和時代の名画のポスターや広告看板などで、実にセンスよく「古き良き時代」が再現されている。自分がどこにいるか一瞬忘れてしまいそうになる心地よさで、今後も韓国訪問の「定番」にしたいと思う。もっとも、私はひどい方向音痴である。その店への道のりも、方向感覚に優れた姉頼みになりそうだ。