No. 93 教師元年 | 日本語教師養成講座のアークアカデミー

No. 93 教師元年

2019/01/07

「いい予感」で幕を開けた2018年。つい欲を出してあれこれ期待してしまったが、振り返ってみれば、1月の「上野動物園シャンシャン観覧券当選」で1年分の運を使い果たしてしまった感がある。そこで、新たな年に更なる幸運を招くべく、学校が期末テスト真っ只中の12月中旬、2泊3日の旅に出た。行き先は香港。年末年始のピーク前で、かろうじて料金が安いうちに…というのは言うまでもないが、「忙しい時期だからこそ、パワーチャージを」という意味もあってのタイミングだった。香港へは過去に3回訪れたことがあるが、なんとそれは香港がイギリス領で、中国返還前の観光ブームだった頃。私がまだ日本語教師になる前のことである。


2018年は、なぜか香港がずっと気になっていた。「久しぶりに行きたいな」から、徐々にその思いは強くなり、最終的には「行かずして年は越せない!」くらいの熱量で香港に呼ばれていた気がする。実は昔、かなり香港にハマっていたことがある。正確に言えば、香港映画が大好きだった。その空気に触れたくて訪れるようになったのだ。1回目の旅は観光付きの格安ツアー。ホテルは当然ながらエコノミーで、立地こそ良かったものの、部屋は古く、狭く、壁もごく薄かった。ベッドカバーやカーテンが汚れたり、破れたりしているホテルに泊まったのは、後にも先にもそのときだけである。が、香港はそれさえ笑い飛ばせるほど魅力的な街でもあった。


3回目の旅は、忘れもしない「ニンジン」だった。当時は1月に行われていた日本語教育能力検定試験を受けるにあたり、「絶対に合格するぞ!」と誓って、試験後の香港旅行を手配。ひたすらそれを楽しみに勉強に励んだ。その「ニンジン」が功を奏したのか、試験は無事に合格。つまり、香港パワーが日本語教師への道を後押ししてくれた、と言っても過言ではない。


今回、久しぶりに街を歩いてみて、過去3回の旅がよみがえった。1回目は日本語教育とはまったく縁がなく、小さな広告会社でコピーを書いていた。2回目は日本語教師養成講座に通い始めていた。そして、3回目は日本語教師という仕事がかなり現実的になっていた。もっとも、その年の12月に台湾に赴任できるとは予想もしなかったけれど。約22年を経て、あの頃と同じように、歩いて、食べて、しゃべって…香港を満喫した2泊3日は、期せずして「初心に帰る旅」でもあった。2019年は「元年」を迎える年でもある。私も新たな気持ちで臨みたい。