No.140 ハイブリッドへの道 | 日本語教師養成講座のアークアカデミー

No.140 ハイブリッドへの道

2021/03/16

いつからか、コマーシャルなどでさかんに使われ始めた「ハイブリッド」。ハイブリッド車をはじめ、ハイブリッド野菜なども「ハイブリッド」と付くことで、どこか近未来感、最新テクノロジー感が漂う。ゆえに、私などは自分とは無縁のものだと思っていた。が、ついに関わらねばならないときがきた。ハイブリッド授業である。昨年からのオンライン授業にようやく慣れてきたなと安心していたところでの、新たなタスク。今年も「まだまだ気を抜くな」ということなのかもしれない。


さて、ハイブリッド授業とはどんなもので、なぜそれを採用するのか…。それには、当然ながらコロナ禍が大きく関係している。以前にも何度か書いてきたが、昨年から、留学クラスの授業は密を避けるために、オンラインと対面の両方を取り入れて行われている。だが、クラスによってはまだ来日できていない学生もいて、オンライン授業の場合は問題ないのだが、対面授業の際には一部の学生だけが母国でオンライン授業を受けることになる。そこで、ハイブリッドの登場である。教室にはオンライン用のパソコンを用意し、教壇の様子が映るカメラを別途設置。その画面はテレビのモニターで教室の学生にも見えている。これで対面授業を行いながら、同時にオンラインの学生にも対応していくのだ。ならば、基本は対面形式でいいのかというと、通常の板書ではオンラインの学生には見えづらく、必要に応じてパワーポイントも活用…と聞き、心配になって夢に出てくるほどだった。


幸いだったのが、私はたまたまオンライン授業にあたる日が多く、ハイブリッド初登板が他の教師に比べて遅かったことだ。そこで、既に何回か担当していた教師たちに、どんなふうに進めているかを聞いてみた。そして、いろいろなアドバイスをもらいつつ迎えた初登板の日。いざ本番は「まあ、何とかなるでしょ」と半ば開き直って教室に入った。結果、自分でも拍子抜けするほど、あっけなく授業は終わった。もちろん満点というわけではない。途中、オンライン授業の学生に声をかけるのを忘れたり、カメラから外れてしまったりで、教室の学生に「先生、カメラはここですよ」などと指摘される一幕も。それでも何とか大きなトラブルはなく、ハイブリッド授業の1回目を終えた。


ちなみに、この「ハイブリッド」。言うまでもなく、異種の組み合わせで生まれたものという意味だが、語源がラテン語の「Hybrida」で、もともとは「イノブタ」のことだと知って驚いた。たしかに「イノシシ」と「ブタ」を掛け合わせて生まれた「イノブタ」は、まぎれもなく「ハイブリッド」である。いま思えば、授業前に感じた妙なプレッシャーは、「ハイブリッド」=「自分の理解を超えたすごいモノ」という勝手な解釈によるものだったのではないかと思えてきた。実は、年々この「思い込み」が増え、老いを痛感している。まず頭を柔らかくせよ。「ハイブリッド」の教訓である。



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