No.139 わたしの十八番 | 日本語教師養成講座のアークアカデミー

No.139 わたしの十八番

2021/02/26

1月からの選択授業は、卒業までの期間をできるだけ楽しく過ごしてほしいということで、いつも娯楽性あふれるメニューになっている。今年は木曜日限定で「現代ポップカルチャー」「今の日本を知る」「知っておきたい日本の名作」の3つ。とは言っても、「現代ポップカルチャー」が4クラス、それ以外は1クラスずつの計6クラスである。これまでと大きく違うのは「選択授業の日は対面授業」という暗黙の了解があったのだが、今回は木曜日は全てオンラインでの授業と決まったことだ。


私はというと、「知っておきたい日本の名作」を担当することに。つまり、たった1つのクラスであり、そこはかとなくマイナー感が漂っている。実は、私はこのマイナー感がけっこう好きである。1クラスしかないということは自由にアレンジできる。そして、マイナー感に惹かれて集まった学生が多いに違いない、と勝手に推測したのだ。いわゆる「類は友を呼ぶ」ではないかと思った。


さて、1月21日から始まったクラスは総勢13名、やはり小ぢんまりしたクラスであった。予想では欧米の学生が多いかと思われたが、中国の学生もけっこういた。初回の自己紹介では、「黒澤明監督の作品が好き」「国の大学で日本文学を学んだ」「落語が好き」といった学生もいて、いい意味でのプレッシャーを感じた。ちなみに、授業は「聴解」と「読解」で構成され、第1回は聴解が落語で『饅頭怖い』、読解には松尾芭蕉や与謝蕪村をはじめとする俳句を紹介。第2回は聴解が歌舞伎で『勧進帳』、読解は夏目漱石などいわゆる文豪たちとその作品の一部を、第3回は聴解が映画で『七人の侍』と『男はつらいよ』、読解は詩と児童文学で宮澤賢治や中原中也、そして与謝野晶子などの作品をピックアップしてみた。概ね反応もよく、『饅頭怖い』を見ながら笑っている学生もいて安心した。


そして、ラストの第4回。読解は『源氏物語』『枕草子』『徒然草』などの古典ですんなり決まり、対する聴解は「世代を超えて愛される名曲」とした。名曲と呼ぶからには若い世代にも知られていることが必須である。そこで、20年以上前を条件にリストアップしたものを30代前半の若き教務担当に「これ知ってます?」と確認。『上を向いて歩こう』から『Love Love Love』までの6曲を選んだ。紹介した後、どの曲がよかったかを聞いてみたところ、『上を向いて歩こう』と、私が好きで入れてみた『なごり雪』が一番人気であった。「初めて聴いたのに、懐かしい感じです」とコメントしてくれた学生もいて、こちらも何だか感動してしまう。そこで、私は「これ、私のカラオケの十八番です」と言ってみた。実は、第2回の授業で「歌舞伎から生まれた言葉」の一つとして「おはこ」を導入したのである。果たして…学生は覚えていなかった。まぁ、学生たちが楽しんでくれたのなら成功としよう。それにしても、名曲を聴くにつけ「早くカラオケに行きたい!」と強く思う日々である。



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