No.144 久しぶりの教室で | 日本語教師養成講座のアークアカデミー

No.144 久しぶりの教室で

2021/06/11

GW明け直後はすべてのクラスがオンライン授業だったが、徐々に登校を取り入れて、現時点では各クラス週2回ペースで対面授業となっている。オンラインが続くと、それに慣れっこになってしまい、いざ教室での授業というときに「何か忘れていることはないか」などと不安になるが、学生は学生で久しぶりの教室に少し緊張しているように見える。おそらく、学生の中には「オンラインのほうが気楽」という意見もあれば、「対面授業じゃないと集中できない」という意見もあるだろう。いずれにしても、今の状況では、対面授業は貴重だ。ゆえに、教師も心して臨まなければと思う。


さて、つい先日のあるクラスでのこと。このクラスの対面授業はGW前に入って以来だから、実におよそ1か月半ぶりであった。かなり長く担当しており、人数もさほど多くはないので、学生の名前なども把握でき、私としては「やりやすい」クラスだ。教室に入ってきた学生も「先生、お久しぶりです」とにこやかに挨拶してくれる。オンラインでは「マスクなし」の顔をお互いに見てはいるが、やはり「見る」と「会う」の違いはとても大きい。改めて対面授業はいいな、と実感する。


そのクラスでは、私は試験対策の読解と口頭表現を担当している。読解に関しては、設定した時間内で問題を解いて答え合わせ。そして、最後に「覚えてほしい語彙・表現」をピックアップして確認するようにしている。その日も、プリントを配付して進めていたのだが、中に「〇〇じみた」という表現があった。「子どもじみた行動」などの「じみた」である。「マイナスの意味で使われることが多い」などざっと説明した上で、例として「年寄じみた話し方」も入れておいたので、休憩前のタイミングで、ある男子学生に質問してみた。「『年寄じみた話し方』って、どんな話し方だと思いますか」。すると、突然の質問にあわてた学生が言った。「えーと、それは先生みたいな話し方です」。


その後に一瞬の間があり、ドッと笑いが起きた。私も思わず吹き出してしまったのだが、それを聞いて、彼はさらに焦ったようで「あ、いえ、その、先生というのは、先生のことではなくて…」としどろもどろになってしまい、さらに笑いが起きたまま、休憩時間に。申し訳なさそうな彼に「さっきの答え、面白かったよ」と声をかけると、近くの女の子たちがクスクスと笑った。彼の説明によれば、先生というのは私のことではなく、一般的な教師をイメージした話し方ということのようだが、期せずして起こった笑いで、教室の空気が一気に和んだ。久しぶりの緊張感も消えた気がした。


久しぶりといえば、出産・育児でお休みだった専任教師が復帰し、約1年ぶりに学校で会えた。そのとき彼女から「産休中も『チリもつもれば』のおかげで学生の様子がよくわかりました」とのうれしい言葉が。会えない日々の後には、必ず「再会」が待っている。今はそれを楽しみにしたい。



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