No.145 スイカと風鈴と | 日本語教師養成講座のアークアカデミー

No.145 スイカと風鈴と

2021/06/30

学校の3階に入ってすぐのところにボードがあって、各階の教室番号と、それを使用するクラスが書かれている。それが、久しぶりに「いっぱい」になった。6月21日からの1週間、すべての授業が対面で行われたのである。当然ながら、体温・体調チェックを実施し、授業に時間差を設け、エレベーターは5名定員とするなど、感染対策には十分に注意を払ってのことだ。私が登校した日、あちこちで講師同士「お久しぶりです」という挨拶が笑顔で交わされていた。上野動物園での双子のパンダ誕生翌日には、「双子の赤ちゃん、おめでとうございます」と私に声をかけてくれる先生方もいて、まるで出産に立ち会った飼育員さんのような気分になり、パンダ好きとしてうれしかった。


ところで私は、その週が担当クラスの「中間テスト」にあたっていた。読解と口頭表現、しかも学生数の多いクラスなので、オンライン授業となると、正直「けっこう面倒だな」と思っていた。オンラインでの筆記テストの場合、「学生はメールでテストを受け取り、それぞれ手元の紙に書いた答えをスマホで撮って、学校に送信したら終了」という方法がとられているのだが、何の不具合かメールが届かないケースもあり、あたふたしてしまうことがある。口頭表現もペア分けから発表まで、オンラインでうまく進めるのは大変だ。結局、対面授業で実施することができて一安心。対面授業さまさまで、それなりに慣れてきたとはいえ、相変わらずアナログ派のままであることを痛感した。


こんな私ではあるが、最近、オンライン授業のノウハウについて、おこがましくも先輩風を吹かせてしまった。ニュースでも報じられているが、昨年から新型コロナウイルス対策では「優等生」と言われていた台湾で、ここにきて感染者が増加し、現在もさまざまな措置がとられている。私が働いていた日語補習班も休校が続いており、そこでオンライン授業の話がもち上がったようで、元同僚である友人から「どんなもんかしら?」という問い合わせが来たのである。私のアドバイスが果たして役に立ったか否かは不明であるが、ついにオンライン授業が始まったとの連絡があった。


さて、先ほど「すべての授業が対面」と書いたが、実際には未入国の学生のオンライン授業は続いている。それはそれで明るい気分で臨むべく、今年に入って凝っているのが「手ぬぐいタペストリー」だ。日本橋の誠品生活にあるお店で、季節に合わせた絵柄の手ぬぐいを購入。タペストリーとして部屋に飾り、それをオンライン授業の際の背景にしているのだ。その店には何度も足を運んでいるので、スタッフの方とも顔見知りになり、絵柄へのこだわりを聞くのも楽しい。先日は夏の1枚として、藍地にスイカと風鈴をあしらった手ぬぐいを選び、さっそく部屋に飾っている。果たして、学生たちはこの背景に気づいてくれるだろうか。画面を通して、夏気分を共有できたらうれしいなと思う。



essay2017001