No.157 きらっきらの目 | 日本語教師養成講座のアークアカデミー

No.157 きらっきらの目

2022/04/18


4月中旬になって、いきなりの夏日。前ぶれもなくやってくる暑さが、年々つらく感じるようになってきた。「そうは言っても、まだ衣替えには早いだろう」などと悠長に構えていたが、とうとう耐え切れなくなって夏物を出す。たしか、去年の衣替えはGWの辺りだったので、今年はやや早いペースだ(自分調べ)。「この冬はかなり寒かったため、夏は猛暑になるらしい」という話も聞く。夏はどちらかといえば好きだ。が、私にとっては「汗との戦いの日々」でもある。覚悟が必要だ。

 

さて、そんな夏を感じる暑さの中、4月期の授業が始まった。うれしいことに、3月から再開された留学生の入国も進んでいる。私が担当しているクラスの1つは、去年4月からの「全員オンライン」から、ようやく「対面組」と「オンライン組」のハイブリッド授業になった。このクラスの学生たちは全員が日本での大学進学を希望している。この1年間、入国が叶わない状況で「早く日本に行きたい!」という彼らの思いは、オンラインの画面を通しても痛いほどこちらに伝わってきていた。そんな日々を経て、まだクラスの半分ほどではあるが、ようやく念願の「教室での対面」である。

 

私の初登板は、水曜日。月曜日から授業は始まっているので、それなりに空気も和んだ頃か…と思っていたら、月曜日に入った担任教師から「みんな元気で目がきらっきらしています」との報告があった。やっと日本に来ることができたワクワク、そして、これまで画面でしか会えなかった「クラスメート」と同じ教室で机を並べているウキウキが、この「きらっきら」によく表れている。

 

迎えた、水曜日の朝。早めに教室で準備していると、しばらくして学生がやってきた。手を振りながら笑顔で入ってきた学生を見て、「あー、〇〇さん!」と思わず声が出る。中には、見慣れているはずなのに「この人は…誰かな?」と、一瞬考えてしまうケースもあり、少ししてから「ああ!」と気がついた。想定内ではあるが、画面を通した印象と実物ではギャップがつきものなのである。

 

実は前日までは、教室で彼らを迎えるとき、どんな言葉をかけようかと考えていた。ちょっと冗談っぽい口調で「ようこそ日本へ!」などと言おうか。いや、もしかしたら、会った瞬間に感動して泣いてしまうかもしれない…などとも思っていた。が、いざとなると、気の利いたことのひとつも言えず、泣くこともなかった。ただ、楽しそうに話している彼らを見ているだけで笑顔になれた。

 

今後も学生たちの入国は続くが、全員が揃うまでには、まだ少し時間がかかりそうだ。当面の課題は、「オンライン組」にも臨場感を届けること。ハイブリッドの難しさはあるけれど、できるだけバランスよく声がけを行い、教室の空気感が画面を通して伝わればと思う。そして、全員が揃ったそのときには、きらっきらの目をしっかり見ながら、心を込めて「ようこそ日本へ」と言いたい。