No.194 学生の国で | 日本語教師養成講座のアークアカデミー

No.194 学生の国で

2025/04/18

卒業生を送り出してから、授業は3月20日から4月6日まで、しばし春休みに入った。その間はのんびり過ごせるか…と思ったとき、大きなニュースが飛び込んできた。3月28日午後に発生したミャンマー中部の大地震である。発生当初はなかなか情報が入ってこなかったものの、時間を追うごとに震源地に近いマンダレー、さらには隣国タイからも深刻な被害状況が伝わってきたのだ。

地震大国に住む者としては他人事では済まされない。しかも、準備教育課程を担当するようになってから、多くのミャンマー人留学生に接してきた。特に、卒業したばかりの学生たちの顔が、ニュースを聞いた瞬間にパッと浮かんだ。進学のために関西、北海道などに引っ越した学生もいて、おそらく「よし、新しい環境でがんばろう!」と思った矢先のことだっただろう。改めて、自然災害はいつも非情である。学生たちは誰も一時帰国してはいないが、家族や友達のことがさぞ心配に違いない。笑顔で巣立っていった彼らがそんな思いをしていると考えただけで、こちらまで辛くなってくる。

しばらくはニュース番組やネットで最新情報を拾い、私なりに現地で何が起きているのかを探る。そうしているうちに、又聞きではあるが少しずつ学生たちの情報が入ってきた。「震源地から離れたヤンゴン出身なので大きな影響はなかった」という学生の話に安堵し、「家族や家は大丈夫だったが親戚の家が全壊してしまった」という学生の話を聞いて複雑な気持ちになり、「地震直後から家族となかなか連絡がとれない」という学生の話に心配が募る…という数日間を送った。結局、卒業生&在校生の身近で大きな被害が出たという話は今のところ入っていない。この一件で、訪れたことのないミャンマーという国が、学生を通して、自分にとっても「近い国」となっていたことを実感した。

さて、4月期が始まって2週間ほど経った。今期は準備教育課程2クラスと留学1クラスを担当している。留学クラスは半年ぶりになるが、なかなか元気で楽しいクラスだ。担当するのは「口頭表現」なので、とにかく、「間違えてもいいから、たくさん話したい」という授業にしつつ、自分でも楽しみたいと思う。また、水曜日の後半は「選択授業」なのだが、私が担当するのは「日本事情 生活のための日本社会理解」と題し、「日本の地域の特色と文化」を紹介するもの、らしい。私自身がどこまで全国のことを知っているか疑問だが、各地のいろんな魅力を面白く伝えられたらと思う。

学校は教務担当も増え、とてもフレッシュな空気に包まれている。1年には4月期、7月期、10月期、そして1月期と、新しい学期があるのだが、やはり桜咲く4月期は格別だ。春の陽気に誘われてか、学生たちも元気に出席している。目下、私の課題は、新しい留学クラスの学生と教務全員の顔と名前を覚えること。昔はあんなに覚えられたのに…ふと過去の自分を褒めてやりたくなった。