No.205 「人生相談」承ります | 日本語教師養成講座のアークアカデミー

No.205 「人生相談」承ります

2026/03/23

午前の授業が終わり、出欠状況や、授業内容をパソコンに入力していると、「先生、学生が…」と遠慮がちな声がする。「えっ、ワタシ?」と思いながら振り向くと、声の主である専任講師の近くに、授業を担当している準備教育課程(24組)の学生がニコニコしながら立っている。思わず、「何? また人生相談?」と笑いながら私が聞くと、「へへへ」と彼は肯定も否定もしない。ただ、だいたい手に何か資料のようなものかスマホを持っているので、それは何か相談があるというサインなのだ。

相談内容は何ということもない。あるときはアルバイトについて。2つの異なるバイトのうちどちらを選んだほうがいいか、急遽シフトに入るよう頼まれたが断る場合はどう言ったら支障がないか、など。またあるときは、進学が決まったので引っ越し先の部屋を決めたいが、どんなことに注意が必要か、不動産屋がくれた数枚の物件情報の中でどれがいいか…などなどだ。家賃はもちろん、外観や間取り、築年数や設備をチェックしアドバイスする私は、さながら怪しげな風水師のようである。

2019年秋以来、ずっと準備教育課程を担当してきた。日本語だけではなく、21組と22組では「公民」の授業も担当。「大学時代に取得した社会の教員免許がまさか今になって役に立つとは!」という驚きと、公民を留学生たちに教えるという、とても新鮮で貴重な経験をさせてもらったと思う。

何と言っても、一つのクラスを1年半、または2年にわたって担当するのも準備教育課程だけの特別なこと。学生たちの目標も大学・専門学校進学と明確で、その目標に向かう学生たちを長く見守ることで、一人ひとりの「成長」もわかってくる。だからこそ、日々頑張っている学生は素直に応援したいと思えたのだろう。「人生相談」はそんな意味もあって、私自身にとっても楽しい時間だった。

さて、そんな準備教育課程だが、先日卒業した24組をもって終了となった。2019年秋から2026年春まで、実にいろんなことがあり、多くの学生たちが在籍した。当初は中国、ベトナムからの留学生が中心だったが、24組はミャンマーを中心に、マレーシア、ベトナム、中国出身の留学生たち。思えば、開講後の2020年春にコロナ禍に見舞われ、授業はオンラインとなり、その後のハイブリッド授業を経て、ようやく留学生の来日が叶い、対面授業が復活したときの感動がよみがえってくる。脳裏に浮かぶそれぞれのクラスの学生たちが、今しっかりと夢に近づいていることを願ってやまない。

今年の卒業式の朝、都内は本格的な雪が降った。みんなの足元は大丈夫だろうかと心配したが、まるで式に合わせるかのように徐々に晴れ間が見えてきた。念のため昨年の「No.193 それぞれの物語」を見直してみたところ、なんと同じように「午前中は雪、午後は一転して晴れ上がった」とある。今年は桜前線が例年より早く進んでいる。留学生たちの目に映る満開の桜は、きっと希望にあふれているだろう。