No.126 いざ出陣!
2020/06/04
6月1日。以前なら「日本では、今日から衣替えです」などと呑気に話していたものだが、今年は、いつになく緊張感をもって迎える1日となった。3月に入ってからの休校、GW前後からのオンライン授業を経て、ようやく対面授業、つまり学校での授業が再開したのである。とりあえず、各クラス週5日のうち2日を対面授業、残りの3日をオンライン授業としてスタートすることになった。オンライン授業もようやく慣れてきたとはいえ、心の中では「そろそろ教室で授業ができたらなぁ」との思いを募らせていた矢先で、何よりの吉報であった。
再開にあたっては、やはり学生の安心安全が第一。ということで、さまざまな工夫やルールが設けられた。登校時の検温やマスク着用、除菌対策はもちろん、登校日を分散させ、授業時間も午前は9時15分と45分スタート、午後は13時15分と45分スタートの各2パターンを設定。学生同士が極力接触しないように配慮がなされた。また、教室内が「密」になるのを避けるために、教室を2つ合わせた広い空間を作り、学生同士が隣り合わずに、ゆったりと授業を受けられる環境とし、常に窓を開けて換気。さらに、エレベーターは上り専用、階段は下り専用と決め、移動時の接触を避けるなど…それらは、事前のメールで詳細に知らされていた。
そして、私は、たまたま対面授業の初日に登板。前日の夜は「抜かりがあってはならぬ」と、学校からのメールを何度も読み返し、留意すべき点には蛍光ペンでマークするなど、私なりに万全を期して臨むべく備えた。まさに「いざ出陣!」という覚悟。長かった自粛生活の中で、めずらしく時代劇を見る機会が増えたせいか、気分は「戦を前にした武士」である。
さて、久しぶりの教室での学生たちは…。彼らにとっても3か月というブランクは長かったのだろう。しかも、状況は大きく変わっていたこともあり、はじめは緊張のせいか表情も硬い…ように見えた。もちろん、学校での授業が始まるという期待感もあっただろうが、やや微妙な空気が流れていた。が、徐々にほっとした表情がマスク越しに見えるようになる。その「ほっ」が見えたのも、対面授業ならでは。私自身も、やっと安心できた瞬間だった。
ところで、学生の検温は学校で実施されたが、教師には当日の朝、自宅での検温&報告が義務づけられた。そこで気がついた。体温計がない。自慢ではないが、これまで長年めったに熱を出すことなく生きてきた。テレビで「体温計が品薄」と聞き、慌ててドラッグストアを何軒もあたったが、案の定、全て売り切れ。結局、ネットで何とか手に入れた。マスクも体温計もいらない「日常」への道のりは、まだ遠い。が、たしかに今、その一歩を踏み出した。