日本語教師の日常エッセイ「チリもつもれば」No.7 | 日本語教師養成講座のアークアカデミー

No.7 早めも良し悪し

2015/06/16

教師がやってはいけないこと。言うまでもないが、その中の一つが遅刻である。学生ならば、利用路線の「遅延証明書」を印籠のように提出すれば遅刻がなかったことになる場合もあるが、教師はそういうワケにもいかない。そこで「何かあった場合」に備えて、早めに行動することが必要になるのであるが、私にはその加減がけっこう難しい。


職業病なのか、それとも単に年のせいなのか、私の「早め」が加速しているような気がして自分でも怖い。数年前、姉と関東近郊へのバスツアーに参加した。何回か自由行動があったのだが、バスに一番早く戻ってくるのはいつも私たち姉妹。最後には、バスで待っていたガイドさんに「いやー、早いですねえ」と、半ばあきれられる始末であった。


我ながら、いつからこんなに「早め人間」になったのか。辿ってみると、日本語教師養成講座修了後すぐに赴任した台湾に、そのルーツがあるように思う。台湾の日本語学校の朝は早い。私が赴任した学校でもズバリ「早朝班」というクラスがあった。出勤&登校前の会社員や学生を対象にした、月曜から金曜の朝7時半から50分間のクラスである。


着任して半年ほどした頃、私にもついに「早朝班」が回ってきた。そして、縁あってそのクラスを離任までの2年間にわたって担当することになる。朝7時半からの授業―ついつい寝坊してアウト、も十分あり得る時間である。その緊張感が、私の早め魂に火をつけた(のだと思う)。


その2年間というもの、朝5時すぎに起き、まだ暗い中をバスに揺られ誰よりも早く学校に到着。持たされていた鍵でドアを開け、しばし朝のウォーミングアップを行っていた。と言っても、教科書をぼーっと見ながら、学校近くのおじいさんの屋台で買った豆乳と、肉まんか野菜まんを頬張っていただけなのだが。ただ、その時の「今日も寝坊せずに無事学校に着いた」という安心感と満足感は、何とも心地いいものだった。

 

あれから15年。「豆乳」は「コーヒー」、「肉まん」は「サンドイッチ」になり、授業の開始時間も9時に変わった。しかし、早め魂は健在である。そして、一つの結論を得た。「心身ともに、できるだけいい状態で授業に臨むことができたら、その日の授業はほとんど成功だ」と。ただ、これ以上「早め」を加速させないことが、私の目下の課題でもある。

 

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