No.108 ワタシが二人? | 日本語教師養成講座のアークアカデミー
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No.108 ワタシが二人?

2019/08/21


学校には数多くの教師がいる。午前と午後を合わせて30近くなるクラス数を考えても、専任と非常勤で相当な人数になることは確かだ。さらに、スタッフの数を合わせると、私も全く把握しきれない。学生にとっては通常のクラスに入る教師が週3人、時には4人おり、さらに週3回の選択授業も…となれば、教師の顔と名前が一致しないことなど多々あるだろう。


そもそも、学生は教師をどう見分けているのだろうか。あくまで私見であるが、特別に興味のある対象以外は「若いか否か」「痩せているか否か」「髪が長いか否か」などの要素で、ザックリと認識しているだけではないだろうか。いや、「その他大勢」という分類もあり得る。


さて最近、私の身に、学生による「人違い事件」が起きた。ある日の授業後、学生が私を呼んでいると言われ「何だろう?」と思いながら、受付に行ってみると、私が担当していない授業の課題を「先生、書きました!」と目の前に差し出された。「これ、私じゃありませんよ」とやんわり伝えたものの、あまりにまっすぐな目に押し切られそうになった。そのとき、背格好や髪型が私と似ている(と思われる)先生を思い出した。そして、「これは〇〇先生ですよ」と言いつつ、代わりに受け取っておくことにした。その学生はといえば、まるでキツネにつままれたような表情をしている。私は騙しているわけでも、からかっているわけでもないのだが。


そして、つい先日もこんなことがあった。授業後、講師席で宿題のチェックをしていると、私の視界に一人の学生の姿が入ってきた。少し離れたところから、笑顔でこちらを見ている。軽く手さえ振っている。授業後には、担任の先生が学生とカウンセリングを行うことが多いが、私は担任ではない。まったく思い当たる理由がない。ゆえに、その笑顔に反応する前に、思わず私の背後に人がいないことを確認。誰もいなかった。さらに、人差し指を鼻に向けた定番ポーズで「えっ、私?」と確認したが、その学生は頷きながら「はい」と言う。傍から見れば、学生と約束しているのに、その約束をすっかり忘れたか、抵抗している教師といった感じである。


学生に指名されている以上、動かないわけにもいかず、立ち上がって学生のところに行った。そして「何か?」と間近で話しかけたところで、彼の表情が変わった。「あ、間違えた!」。なんと、担任の先生と私を間違えたのである。よりによって担任と間違えるとは…。そういえば、以前、その先生から「この間、学生から先生と間違われました」と報告を受けたことがあった。私の知らないところで、混乱が日々起こっているのかもしれない。特に女性教師が多い日本語学校では人違いも責められない。だが、せめて…担任の先生は覚えてほしいものである。