No.149 新しい水曜日
2021/10/20
学校は10月11日から新学期がスタート。担当の曜日が少しだけ変わり、久しぶりに水曜日の午前クラスを担当することになった。月曜日も朝のクラスを担当しているが、未入国の学生のオンライン授業ゆえ、それほど「早い」という感覚はない。しかし、久しぶりの対面での午前クラスは「寝坊はできない」という極度の緊張感が伴う。前日は早めに就寝したものの、夜中に何度も目が覚めた。
結局、いつもは1つのアラームを2つセットしたこともあり、何とか寝坊せずに起きることができた。交通機関もスムーズで、早めに学校に到着。ゆっくりと配付用のプリントをコピーするなどして、気持ちも徐々に上げていく。オンライン授業で忘れかけていた、朝の授業の感覚が戻ってくるのがわかった。やはり時には適度な緊張感が必要だと改めて思う。こうして新しい水曜日が始まった。
実は、前期もこのクラスを担当していたのだが、中級クラスとなって授業時間が午後から午前になったのだ。朝のラッシュアワーとは無縁だった彼らにとって、日々の満員電車はさぞストレスだろう、水曜ともなれば遅刻も多いのではないか…などと思いつつ、少し早く教室に行って学生を待つ。
私は「水曜日が好き」である。もし私が学生の立場なら、月曜日から金曜日の授業すべて同じように集中するのはしんどいだろう。そこで、勝手に「水曜日はリラックスデー」と考えているのである。今期の水曜日は「文章表現」と「口頭表現」で、教材はこちらで用意するので、学生は教科書を持参しなくていい日なのだ。そう伝えると「ラクでいいですね」と前に座っている学生が笑った。
ところで、このクラスには2人の新入生がいる。残念ながら、まだ来日できずオンライン授業での参加なのだが、会話力もあり、他の学生にとっていい刺激になっているようだ。休憩時間に彼女たちと軽く雑談していたところ、教室の学生の1人が「先生、僕、○○さんに質問があります」と、新入生の名前を口にした。「じゃ、ここに来て聞いてみて」と学生を教卓に呼ぶと、その姿がカメラに映り、にわかに自己紹介が始まった。教室の学生には、テレビのモニターで新入生がよく見えているのだが、新入生には教室の学生は見えない。「やっと会えたー」と、冗談っぽく彼女が笑っている。
幸いなことに、水曜日は「口頭表現」の日である。その日は「誘う」というテーマで進め、最後にペアになって会話を作成、発表という段取りだった。発表の「ステージ」は教卓。2人欠席者がいたものの、他の学生はすべてカメラを通して無事に「初対面」を果たすことができた。「みんなに会えてよかった」というモニターの笑顔に、教室も一気に和む。ちなみに、学生の質問とは「なぜそんなに日本語が話せるのか」だった。返ってきた「長い時間、勉強を続けてるからかな」という言葉に学生は素直にうなずく。早起きはまったく気が抜けない。が、何だか楽しい水曜日になりそうだ。