No.164 ああ秋休み | 日本語教師養成講座のアークアカデミー

No.164 ああ秋休み

2022/10/12

9月下旬から2週間半ほど、学校は秋休みであった。台風さえ避けられれば、旅行には一番いい季節。しかも、社会人にとってゴールデンウィークや夏休みより長い休暇というのは、かなり貴重である。気分的には「久しぶりに旅行!」といきたいところだが、地味ながらも、年末年始から果たせずにいた帰省をすることにした。せっかくなら、たっぷり1週間。雪国である故郷では、年末年始の天気は気まぐれだ。比較的穏やかな年越しもあるが、近年は雪、さらに吹雪に見舞われたりする。


ゆえに、学校の秋休みは、ちょうど帰省のベストシーズンなのである。幸い新型コロナウイルスの感染者数もかなり減ってきたようで、私自身はワクチン接種も済んでいる。というわけで、いざ故郷へ。初日だけは小雨に降られたものの、翌日からは期待以上の快晴続き。町のシンボルでもある山が、ひときわ雄々しく青空に映える。家の近くを散歩しているだけで、何だか気分爽快である。


久しぶりに友人たちとも集まり、日曜日には姉とローカル線でちょっとだけ遠出もした。と、ラッキーなことに、途中の乗換駅でタイミングよく、近年復活したというレトロな車両の急行に乗ることができた。週末限定で走っているというその列車は、若者を中心とした、いわゆる「鉄オタ」たちで賑わっている。鉄道グッズの車内販売あり、途中駅のホームでは地元のお年寄りによる「笹寿し販売」ありと、イベントもなかなかの充実ぶりである。何より、ガタンゴトンと古い車両に揺られながら、ふと眺める日本海はとても穏やかで、真夏とも、もちろん冬とも違う表情が楽しめた。


その帰りの列車に、外国人らしき若者3人が乗ってきた。かすかに聞こえてきた言葉から、ベトナム人のようだ。最近では、地元の企業で働く外国人も増えていると聞く。学生のようにも見えるが、働いていて、週末を利用してのプチ旅行かもしれない。ちょっと緊張した様子の3人を見て、「日本語はわかるのかな」「日本の生活で、何か困っていることはないかな」「日本の食べ物は口に合うかな」などと考えてしまうのは、余計なことではあるが、これは職業病なのでしょうがない。


さて、秋休みが終わると、学校は10月期のスタートである。それに先立って担当者会議が開かれた日、東京は冷たい雨が降り「12月並みの寒さ」となった。だが、担当者会議は明るい空気に包まれた。冒頭で校長先生のお話があり、前日に入学式が行われ、たくさんの新入生を迎えたとのこと。「みんなとても嬉しそうでした」という言葉に、新入生たちのマスク越しの笑顔が目に浮かぶ。また、さらに入国規制が緩和され、査証免除も再開されるなど、日本語学校にとって「明るいお知らせ」が続いた。以前はごく当たり前だった「日常」が、徐々に戻ってきたことを実感できるだけで今は幸せである。しばらく忙しい日々になりそうだ。ただ、その忙しさも楽しめそうな気がしている。