No.163 7時半のコーヒータイム | 日本語教師養成講座のアークアカデミー

No.163 7時半のコーヒータイム

2022/09/16

お盆休み明けから、私の平日がちょっと変わった。他の曜日も6時前には起床しているが、金曜日はさらに1時間ほど早くアラームをセット。年に1度だけ、1か月間ちょっと関わっている、ベトナム訪日後研修を担当したのだ。去年は都合がつかず、私にとって2年ぶりのエントリーである。

 

その研修所の最寄り駅までは1時間半以上かかり、電車の路線も普段は利用していないルートのため、通うのにも緊張感がある。1本逃すと、大幅に予定が変わりそうで怖い。もっとも、こんなに早く起きなくても、授業には十分に間に合う。なぜ5時起きかといえば、目的地の駅内のパン屋さんでモーニングセットを食べるためだ。その訪日後研修に携わって10年近くなるが、毎回「遅延もなく無事に着いた!」ということに安堵しつつ、自分へのご褒美としてサンドウイッチとブレンドコーヒーをいただく、というのが定番になっている。そのため、起床は5時と決めているのである。

 

さて、コーヒーでスイッチをオンにして臨む授業は、午前・午後とそれぞれ別のクラスを担当する。授業内容は午前も午後も同じなので、午前クラスで「こうすればよかった」という反省点は、午後クラスでそのまま生かせるのがありがたい。それでも、2年ぶりの参加ということもあり、まず1日目の朝は、ドキドキしながら、講師室で何度も確認した番号の教室のドアをそーっと開けた。

 

すると、「おはようございます!」と中から声が響く。明るいクラスのようで安心した。少し早めに行ったので楽しく雑談しながら開始時間を待った…のであるが、ふと気がついた。クラスファイルの名簿では、担当クラス20人のうち男性が2人いるはずだ。しかし、目の前に座っているのは、どう見ても全員女性である。「あれ? みなさんのクラスは全員女性ですか」「はい、そうです!」「ここは…6組ですよね?」「いいえ、7組です!」。しばらくして、教務担当が「先生、すみません。教室の番号が違ってました」と、慌てて入ってきた。そして、「本当の7組の先生」も登場。私は急いで荷物をまとめ、「では、みなさん、さようなら!」と、その教室を後にしたのであった。

 

その後は無事に担当クラスに入り、自己紹介などを経て、あっという間に3時間が過ぎていった。みんな反応もよく、時おり冗談も交えながら、とても積極的に発言してくれる。一言でいえば「屈託がない」。私がベトナムで日本語を教えていたのは、もう20年も前のこと。「その頃はまだ日本との直行便がなかったんですよ」などという私の話に、まるでおばあちゃんから昔話を聞く孫のように耳を傾けていた様子が可愛かった。全5回。とにかく、彼らから元気をもらった金曜日だった。

 

余談だが、駅のパン屋のモーニングセット。2年前のサンドウイッチよりも小ぶりで、しかも驚いたことに、値段が100円も上がっていた。また別の意味で、目が覚める出来事となった。