No.177 いつもとちがう秋 | 日本語教師養成講座のアークアカデミー

No.177 いつもとちがう秋

2023/11/08

11月に入ったというのに、暑い日が続いている。東京で11月の夏日は14年ぶりのことだそうだ。授業でずいぶん前に「衣替え」を導入したのであるが、学生たちも私自身も、まだ夏物のまま。おそらく学生も忘れているだろう。そして、教室のエアコンも、例年なら「暑くも寒くもなくちょうどいい気温だから、ちょっと休ませて!」という頃だが、休む間もなくよく働いてくれている。

季節感がなくなってしまったせいか、それとも、単なるモノ忘れか、いつもなら前のめりで楽しみにしているフィギュアスケートも、ネットで大会のスタートを知り、あわてて開催日を確認して、録画をセットしたという次第である。「春と秋が短くなっている」と言われて久しい。実際に秋を実感できないまま11月を迎えてしまった。せめて、日本が「二季」にならぬことを祈るばかりだ。

さて、新学期が始まって1か月ほど経った。今期、私は4つのクラスを担当しているが、そのうち3つが準備教育課程である。去年開講の22組、今年春開講の23Sに加えて、秋の新クラス23Aがスタートしたのだ。従来の2クラスは午前クラスで、新クラスが午後クラスということで、とりあえず「23Aを担当する水曜日は早起きしなくてもいい」と覚えるところから、私の10月期は始まった。

ちなみに、23Sと23Aは、前者は2年で修了、後者は1年半で修了のコースで、自国でそれ相応の日本語を学習してから来日している。両クラスで使用するメインテキストは同じもので、学校でも初めて採用したテキストだ。去年発売されたこの1冊は、トピックもわかりやすく、当然ながら資料も新しい。2クラスで同じテキストを使用するのは、教師としては授業準備がラクというメリットがあるが、それぞれの担当曜日と内容を間違えぬよう、準備の前に予定表の確認が必須なのだ。

新クラスも学生の国籍はさまざまだが、今年開講した2クラスで共通しているのが、男子学生が多いことである。以前なら、語学学習者には女子が多いというイメージだったのだが、この2クラスは名簿を見れば一目瞭然、ずらりと「男」が並んでいる。男子学生が多い場合、授業中のノリとしては悪くないのだが、スマホ集中率が高くなる傾向がある(あくまで個人的感想)。特に春開講のクラスは、半年経った慣れもあり、「スマホと仲良し」が多い。教室での席を指定しているわけではないのに、自ら一番前に座りながら、スマホからほぼ目を離さない学生もいる。注意しても、まったく効果なし。これは果たして、どう解釈すればいいのか。一度じっくり聞いてみたいものである。

10月期は途中に長い休みもなく、ちょっとタフな学期だ。だが、教師以上に、進学を目指す学生たちにとっては心身ともにタフな季節でもある。うれしいニュースも届いているが、まだ「進路未定」の学生も多い。クラス全員で、心から「みんな、おめでとう!」と言える日が待ち遠しい。