No.201 インフルエンザと世界遺産
2025/11/17
東京都にインフルエンザ流行警報が出た。年間を通して数多くの「〇〇警報」を耳にしているので、思わず聞き流しそうになったが、11月にこれが出されるのは実に16年ぶりのことだという。実際、ニュースで知るまでもなく、人々のマスク率が急激に高くなり、学校でもインフルエンザ陽性と診断された学生や、インフルエンザではないが明らかに体調を崩している学生が急増している。
11月、12月は留学生にとって重要な試験が続く。日によっては、この時期を狙ったかのような気温の変化で、教室内はコンコン&ゲホゲホという咳と、ズズズという鼻をかむ音が響きわたっている。マスクをしていればまだいいのだが、マスクなしでの咳き込みはさすがに気になる。「大丈夫?」と声をかけると、「大丈夫です」と即答。いやいや、「せめてマスクはしてね」という意味なのだけれど。
カゼなのか、インフルエンザなのか、それともコロナウイルスなのか、いずれにしても要注意だ。 とりあえず11月の日本留学試験は終わった。残る12月の日本語能力試験も受験予定の学生がいる。十分に実力を発揮できるように。そして、試験会場でゲホズズ…とならないことを祈っている。
さて、10月期が始まって1か月ちょっと。留学クラスでは火曜日から木曜日まで、後半に「選択授業」があるのだが、水曜日の後半は「日本事情」で、私は今期「日本の世界遺産」を担当している。とは言っても、特に世界遺産に詳しいわけではない。だが、各回内容をわかりやすくまとめたPPTが用意されており、それを使って「レクチャーではなく、学生と自由に話しながら」ということで、今のところ私自身も楽しみながら取り組めている。学生たちも「富士山」以外の日本の世界遺産について、新しく知ることが多いようだ。特に、東京の世界遺産として「国立西洋美術館」を紹介したとき、世界遺産をぐっと身近に感じたのではないだろうか。全6回、折り返して12月の初めまで続く。
ちなみに、全部で26ある日本の世界遺産のうち、自分が今までいくつ訪れたことがあるのだろうと数えてみたところ、なんと、たったの5か所だった。もちろん、一度行ってみたいところはたくさんある。個人的には、長年「軍艦島」に惹かれており、いつかその夢を叶えたいと思っている。
ところで、世界遺産ではないが、今年の秋休みに、私にとって念願の場所を訪れることができた。長野県上田市にある『無言館』、第二次世界大戦時の戦没画学生たちが遺した絵が展示されている美術館である。今年が戦後80年ということもあり、おそらく例年以上に多くの人が訪れたのではないだろうか。これまでテレビや書籍で多くの絵を見てきたが、その実物を前にし、添えられた画学生たちの写真とプロフィールを見たとき、改めてその「若さ」に胸がつまる思いがした。さまざまな思いを込めて描き上げたであろう作品もまた、私たちに歴史を伝えてくれる遺産なのだと確信した。





