No.13 不思議の国

2015/09/24

先日、あるテレビ番組で、外国からの観光客が「日本の思い出」として、どんなものをカメラにおさめているのかを街頭インタビューしていた。最近よく取り上げられているのは、渋谷駅前のスクランブル交差点である。「よくまあ、あんなに多くの人がぶつかりもせず渡れるものだ!」ということらしい。日本人の目にはそれほど驚きの光景には映らないが、改めてそう思いながら見てみると、あの交差点の日常的往来も、まるでプロモーションビデオの一コマのように思えるから不思議である。


こんなふうに、外国人の目を通して見た「ニッポン」を身近に感じ、自分自身が新たな「ニッポン」を認識できるというのも、日本語教師という仕事の面白さである。中には「?」というものにも遭遇するのだが。


もう7、8年前の話になる。アジア某国の女性のプライベートレッスンをしていたときのこと。「先生、ちょっと聞きたいんですが」と、「これだけは解決せねば」と言わんばかりの熱いまなざしで質問してきた。


「どうして日本人はカラスを飼っているんですか」


「飼っているか否か」ではなく、あくまで「飼っている」ことを前提に、その理由を聞いてきたのだ。彼女が住んでいるのは東京近郊の閑静な住宅街で、自国で見たことがないほどの数のカラスが「暮らしている」とのこと。彼女の目には、日本人はやさしいがゆえに、カラスでさえペットとして可愛がっているように見えたそうだ。黒々&堂々とした姿にも、人間に大切にされている動物のオーラを感じたのかもしれない。


私は、当然ながら日本人もカラスをペットにはしておらず、むしろゴミ問題などで悩まされている旨を伝えた。と、彼女は安心したような、でもなんとなく消化しきれていないような微妙な表情を浮かべていた。

 

このカラスの話はまだ笑えるが、中にはちょっと考えさせられるものもある。多くの外国人が不思議に思っていること。「どうして、日本では小さな子どもだけで電車やバスに乗って学校へ行くのか」という疑問である。子ども一人で行動するなど危険極まりない、というワケだ。ここはひとつ、胸をはって「日本は治安がいいから大丈夫」と答えたいところだが、今後もそれが通じるのだろうか。多くの「目」を通した素朴な疑問は、時に「フツー」に慣れてしまう怖さを私たちに教えてくれる。

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