No.54 未知との出合い

2017/06/05

ここ数年、近所の公立図書館をよく利用している。うれしいことに、自宅から徒歩5分ほどの距離にこの図書館がある。「ちょっと散歩がてら」という感じで気軽に利用できるのがうれしいし、大きすぎない親しみやすさも魅力だ。


勝手知ったる館内をぶらぶら巡りながら、たいていその時の気分でなんとなく目にとまった本を数冊借りている。先日訪れたとき、目に飛び込んできたのが『目でみる漢字』(東京書籍)という本だった。漢字それぞれ写真とともに、形や意味についてユニークな観点で書かれた本で、私は迷うことなく貸し出し用のカゴに入れる。面白そうな本に出合えたなという予感があった。


この本が気になったのには理由がある。1か月ほど前、某ショッピングビル内の自然派化粧品店の前を通ったときのこと。やさしい香りに誘われて足を止め、店員の商品説明に少し耳を傾けてみた。結局、買わずに店を出たのだが、サンプルとともに渡された情報紙から、軽いショックを受けたのだ。


普段チラシ類はそのままバッグに押し込んでしまうことも多いが、そのときはすぐに目を通してみた。「現の証拠」。まるで裁判用語のような文字が、野草のイラストと写真の横に書かれている。そして、その下にはカタカナで「ゲンノショウコ」とある。それでも、以前から音では馴染みのあった「ゲンノショウコ」と、文字の「現の証拠」が一致するまでに数秒かかった。説明書きによれば、腹痛の際に煎じて飲む野草だが、その効き目の速さと確かさから、この名がつけられたという。今まで知らなかった恥ずかしさより、知ることができた喜びが勝り、文字がくれる心地よい刺激に感動を覚えた瞬間だった。


そんなわけで借りた『目でみる漢字』のページをめくっていく。「虫」という漢字がもともと頭の大きなマムシの意味から広がっていったという話。個人的に蛇は大の苦手だが、確かに「蛇」「蛙」などにも虫がつく。また「アスパラガス」は漢字で「竜髭菜」と書くという話。茎に竜の髭のような部分があるから、ということらしい。また「オクラ」は「陸蓮根」。これは、蓮根に断面が似ていることから想像しやすい。何より感動したのは「蟹」に関する記述で、虫の上の「解」には、カラダを分解しやすいという意味があるのだそうだ。


目からウロコの連続で、出合ったときの予感は的中した。仕事柄「知らない」とは言いにくいことも多い。だが、知らないということは、これから出合えるということだ。また新たな刺激を求めて、これからも図書館通いを続けたい。