No.61 晴れ舞台

2017/09/19

9月初日の金曜日。天気予報では「ザーザー降り」の可能性があった東京の天気もいい意味で外れ、秋のスタートにふさわしい爽やかな朝を迎えていた。その日、代々木にあるオリンピックセンターでアークアカデミーのスピーチ大会が開催され、私もオフを利用して学生たちの成果を聞きに行くことにした。 センターの正門付近は、クラスごとに集合した学生たちであふれている。午前クラスの学生は早起きに慣れているだろうが、午後クラスの学生たちにとっては、朝8時半の待ち合わせ自体が大きな関門である。そんなことも含めて「非日常的興奮」が辺りを包んでいた。会場に向かう途中、運動会のために集まっていた別の日本語学校の学生にも遭遇。まさに、初秋のイベント日和である。


学生たちはクラスで座るエリアが決まっているが、私は出入り口に近い一番後ろの席をチョイス。と、担当しているクラスの学生が私に気づき「先生、どうしてこんな後ろに?」と聞いてきた。私が答えようとする前に「すぐ帰れるからでしょ?」などと言う。鋭い指摘ではあるが、ここは教師らしく「ここからだと、みんなの様子が見られるからです」と模範的な回答でごまかした。


スピーチは『日本留学と私』をテーマに渋谷校と新宿校から21名が登場。ステージに立つ緊張感がこちらにも伝わってきた。特に、顔見知りの学生の発表はハラハラ度も加わって落ち着かないものだ。そういう意味では、順位がない初級クラスの学生による「学習成果発表会」は安心して楽しめていい。こちらは「個人」ではなく「団体」の発表ではあるが、大勢の観客を前にステージに立って日本語を披露するという経験は、大きな刺激になったに違いない。


そして、審査結果の発表。出場者だけでなく、観客の期待感も高まる。特別賞3名の後、3位、2位、そして優勝者が発表されると、同じクラスの学生たちから大歓声が上がった。惜しくも入賞を逃した学生、この日のために準備を重ね、司会やカメラ撮影を務めた学生実行委員にもあたたかい拍手が送られた。


余談だが、私はオリンピックセンターで「暮らしていた」ことがある。約15年前、ベトナムで携わっていたプログラムの任期を終え、7名の学生を連れて帰国。そのまま1か月ほど敷地内の宿泊棟で寝泊まりし、学生の生活のサポートや入学試験の引率などをしていたのだ。正門に一歩足を踏み入れると、ふっと15年前の自分に戻る。あの頃は、現在の自分など想像する余裕もなかったが。今も日本語教師として訪れていることに、不思議な縁を感じている。