No. 78 マスクの人々 | 日本語教師目指すなら日本語教師養成講座、日本語教育能力検定試験対策のアークアカデミー

No. 78 マスクの人々

2018/05/21

今年の4月は東京で夏日が7日もあり、最多記録を更新したそうだ。気温の上昇とともに街の風景も変わるが、その一つがマスク姿の減少である。

冬などは、電車で本を読んでいてふと顔を上げると、前の座席ほぼ全員がマスク姿で驚くこともある。日本人の私でさえ一瞬「!」と固まったのであるから、外国人観光客たちの驚きは想像にかたくない。留学生の中には「信じられない! 私の国で帽子をかぶってマスクしてコンビニに入ったら、ぜったい強盗だと思われます」と興奮気味に話す学生もいる。寒さ厳しいロシアなどは日本以上にマスクの需要がありそうだが、ほとんど見かけたことがない。マスク着用は「深刻な症状」を意味し、警戒されてしまうのだ。ロシアに限らず、アジア以外の地域では、マスクはあくまで「非常用」なのだろう。


先日も情報番組で「外国人観光客が撮った日本の珍しいもの」を取り上げていたが、予想通り「マスク姿の日本人」も話題になっていた。顔のほとんどをマスクで覆う姿は、他人との関わりをシャットアウトしているようにも見えるらしい。実際には、マスク着用に「ノーメイクで素顔を見られたくないから」という理由を挙げる人も少なくない。他意はないのだろうが、もし「日本人は閉鎖的」と誤解されたら、それは残念なことだと思う。


さて、このマスク問題は日本人だけの話ではない。けっして多くはないが、留学生の中にもマスク愛用派は存在する。風邪などで咳き込んでいる様子もなく、理由は不明だが、ずっとマスクをしている。中には数か月担当しているが、一度もマスクを外した顔を見たことがない学生もいるほどだ。


また、あるクラスに、羨ましいほど肌のきれいな男子留学生がいた。韓流スターのようにキラキラしていて、第一印象は申し分ない。さて、2度目の授業。始まる前にざっと見渡すが、彼の姿が見当たらない。とりあえず出欠を取るため名前を呼んでみると、意外なところから「はい」と返事が。そこにはマスク姿の男子学生がいたのだが、それが「韓流スターくん」と一致するのにしばらく時間がかかった。日頃からお肌のケアをしている彼は、その日はケアをする時間がなく、マスクで隠していたらしいのだが…。


マスクは「見せたくないもの」を隠してくれるが、「見せてほしいもの」も隠してしまう。もちろん、マスクをするのは個人の自由だ。だが、せっかく会っても誰かわからない、というのは何とも寂しい気がする。