合格体験記 (宗村 潔) | 日本語教師養成講座のアークアカデミー

合格体験記 (宗村 潔)

2010/04/10

私は2010年末に会社を早期退職し、2011年の日本語教育能力検定試験に照準を合わせて2月(1月期の後半から)にアークアカデミーに入学しました。そこから10月下旬の検定試験までの8ヶ月を通じ受験に向けてのポイントとなりそうなところをお話したいと思います。

1.理論講座について
一般的には理論講座からスタートするケースが多いと思います。その中でも文法は、多少無理してでもできるだけ早い時期に受講されることをお勧めします。検定試験の内容が多岐に亘っているとは言え、やはりその中でもっとも重要かつ現場で必要となるのは文法の知識だと思います。しかもそこにはスピードが求められます。文法を一通り勉強した人にとって、検定試験の文法問題の多くはじっくり考えれば正解できる問題だと思いますが、検定試験で計られるのは、知識の有無と同時にそれを活用して瞬時に判断する能力です。問題Ⅰの文法問題は、1問につき30秒程度でどんどん答えて行かなくてはなりません。問われているポイントがどこかを瞬時に見抜き、それを自分の中にある文法の知識と瞬時に結びつけて判断をすることが求められます。そのためには知識の習得だけでは不十分で、それをベースに数多くの問題パターンに触れて即判断する訓練が必要です。とは言え、ポイントさえ見抜ければ決して難しいことではありません。私の場合は、最初に奥澤先生の文法の授業を受け、受験までの全期間を通じて教科書や問題集に繰り返し触れ、文法から離れる時期を作らないようにしました。

さて、人によっては生まれて初めて接する分野もあると思います。私の場合は、心理学でした。教科書に出てくる人の名前、言葉、ほとんどすべてが私の中では初登場でしたので、復習を繰り返すしか方法はありませんでした。私は、まず授業の直後に1度目の復習をすることから始めました。実行したことは、帰りの電車の中でその日の講義部分の教科書をざっと読み返す、授業のあったその日のうちに授業と同じくらいの時間をかけて内容をレビューしノートを整理する(それが終わるまではお酒は飲まない)、翌週の授業までの間にもう一度ノートと教科書を読む、暗記すべき人名、言葉は、ところ構わず口にする、の4つです。それでも修了試験が終わるとかなりの部分を忘れてしまっていましたが、それは後で述べる検定演習科で再度思い出させることになります。

2.得意分野を作る
先ほども述べましたが、検定試験の内容は非常に多岐に亘っています。当然ですが、得手不得手があります。最初から全部を克服しようと考えないで、まずは自分の得意分野を作ることを考えると良いと思います。私の場合は文法でした。元々理系でエンジニアとして会社勤めをしてきた私は、文法は苦手だと勝手に思いこんでいました。ところが奥澤先生の授業を受けて、「文法ってなかなかおもしろいもんだわい」と気持ちが変わってきて「理系の人は文法が得意のはず」との励ましも頂き、割と短期間の内に「文法の問題は1問も落とすまい」と思うようになりました。自分でこれは得意分野だと意識しなくても、勉強をしていて楽しいと感じるようになればそれはもう得意分野です。試験までの間にはいわゆるスランプに陥る時期がありますが、そんな時にモチベーションを維持するためにも、自分の得意分野を持っていることは効果的だと思います。

3.検定演習科は、知識の整理に活用
検定演習科は全部で10回x3コマの講義です。模擬試験もありますし、自分のそれまでの知識を体系的に整理し、補充すべき点はどこかを客観的に知るという点で非常に有効だと思います。ただ非常に限られた時間(たった45時間)ですから、配布資料の一字一句をすべて解説して頂けるわけではありませんし、さらには配布資料の内容だけを表面的に理解しただけでは十分とは言えません。あくまでも検定演習科で提示された領域の理解すべき内容に漏れがないかを自分で見直す場と考える方がいいでしょう。そういう意味でも理論講座はできるだけ早くに受講し、検定演習科でそれを見直すという形にすることが大事だと思います。

4.初級・中級指導について
実技指導ですが、模擬授業に向けての教案作成もありますし、宿題も出ます。特に初級の模擬授業の準備は理論科目の勉強とはまた違った形で時間と能力を使いますので、これを検定試験の直前に持ってくるのは極力避けた方がいいと思います。しかしながら、この実技指導で身につけるべき内容をおろそかにすると、試験の時、実際の授業に関する出題に全く答えられなくなります。私は教壇に立った経験など全くなかったので、この手の問題は最後まで苦手だったのですが、それでも問題Ⅲのその手の出題に何とかついて行けた(と自分では思っている)のは、この初級・中級指導の授業があったからだと思っています。具体的には、これらの実技のノート、そのときの作成教案とそれに対する講師の先生からのコメントを、検定演習科が終わってからの1ヶ月くらいの期間で読み返しました。「ああ、実技指導でこんなことを指摘されたな」というのが脳裏に残っているだけでもいいと思います。少なくとも、検定試験に向けて理論科目だけに傾注しすぎて、指導編のレビューがおろそかになることのないようにするべきだと思います。

5.スランプは必ずある
私の場合、理論講座を一通り終えた段階で、かなりの落ち込みがありました。今にして思えば、頭が相当疲れていたのだと思います。老朽化の始まっている脳みその、それも今まで使っていなかった部分を半年近くもフル回転させて来たわけですから、そりゃペースも落ちるわな・・・そこで、次の7月期の授業が始まるまでの1週間、勝手に自分で夏休みにしました。ただ勉強から完全に離れるのは良くないと思ったので、勉強していて苦にならない文法だけは、気楽な気持ちで問題集に取り組むなどの形で維持しました。また、音声はブランクを作ると凄まじい勢いで感覚が失われそうだったので、聞き流す程度でも毎日耳にするようにしました。

すべての必修科目、検定演習科も終わって、試験本番まで1ヶ月を切った時期になって、2度目の落ち込みがありました。ちょうど過去問他問題集に取り組んでいた時期でしたが、何度やっても頭に入ってこない問題がばらばらと出てきて、簡単に言うと逆立ちしても合格しない気がしてきたのです。この時期に、検定演習科で一緒だった友人とピアラーニングをしたのですが、それが気持ちの切り替えに大きく役立ちました。お互いに疑問に思っていることを話し合ったり、自分の理解の至っていない部分を聞いてもらったり・・・そこで新しい理解が得られたというのももちろんありましたが、それよりも目標を一緒にしている仲間が目の前にいるということが大きな励みになり、「よっしゃ、あともうちょっとフル回転だあ」と気持ちを新たにできました。その友人には本当に感謝しています。

理論講座では、どちらかというと講義を受ける姿勢が強く、学生同士のつながりはできにくいかも知れません。でも同じ目標に向かっている仲間ですし、そこでできたつながりはきっと教師になっても貴重なものになるに違いありません。是非、早いうちに教室の中で友人を作られると良いと思います。

6.最後の追い込み期
検定演習科が終わってから試験本番までちょうど1ヶ月ありました。この間にいろんな迷いを起こさないようにするために、できるだけ細かく問題演習の計画を立てました。具体的には、アーク:“新合格水準問題集”、奥澤先生の文法問題プリント、過去問3年分、検定演習科の問題、ヒューマン:“日本語教育能力試験完全攻略ガイド”、アルク:“合格するための本”。これらを一覧にして、すべて3回ずつやることを前提に計画を立てました。その際に“この問題は心理学の問題”、“この問題は方言に関する問題”というように全部の問題を分野別に分けておきました。そこに自分の解答状況を入れていくことで理解不足だった分野が見えてきて、自分の弱点に集中した効率的な復習ができたと思います。

7.記述問題
今年からスタイルが変わり、400字のいわゆる小論文形式になりました。原稿用紙1枚ですから多くのことは語れません。ポイントは2つです。与えられたテーマに対しての自分の見解を明確にすること(それが正しいかどうかは問題ではない)、それを相手にわかりやすく伝えること。これができていれば、そこそこの点はもらえると思います。あとは、それを25分くらいで書き上げる練習です。私はいろいろなテーマで時間を計りつつ10回ほど練習しましたが、それだけで本番では不安はありませんでした。

8.最後に
スタートから検定試験までの期間は人によって様々ですし、置かれている環境によっても異なります。私の場合は8ヶ月でしたが、短すぎず長すぎずだったと思います。この間、私の執拗なまでの質問攻めにいつも丁寧に解説して下さった先生方はじめ、ピアラーニングした友人やクラスメートの皆さん方に感謝しつつ、これからチャレンジされる皆様のご健闘を心からお祈りしています。

宗村 潔さん

日本語教育能力検定試験
第25回 平成23年度 合格