日本語教師の日常エッセイ「チリもつもれば」No.24 | 日本語教師養成講座のアークアカデミー

No.24 カウントダウン

2016/03/02

言うまでもないが、今年はオリンピックイヤーである。リオデジャネイロ五輪-以前から準備の遅れや治安問題が懸念されていたが、いよいよ8月5日開催される。運動神経がなく、自分自身はスポーツで「燃えた」ことのない私だが、オリンピックとなるとなぜか心が躍るのだ。


前回書いた台湾生活で強いて不満を挙げるとしたら、1998年の長野五輪が現地のテレビでは全く見られなかったこと。特にジャンプ金メダルの瞬間はどうしても見ないと気が済まず、姉に頼んで『長野五輪・総集編』を録画して送ってもらったほどである。一方、ロシアでは、2006年のトリノ五輪でフィギュアスケートが存分に見られ、大感動であった。不振続きの日本勢で、最後の最後に荒川静香選手が金に輝いた大会だ。


リオ五輪がもうすぐとなれば、日本選手のメダル獲得などにも注目が集まるが、やはり日本人としては次に控える2020年の東京五輪に早くも期待が高まるというもの。そもそも東京が開催地に選ばれた理由の一つが、日本なら問題なく準備できるという「信用」にあったと言われている。昨年のメイン会場やエンブレムの騒動を考えると不安も残るが、とにかく国際的な信用を失わないよう、確実に粛々と進めてほしいものだ。


さて、会場やエンブレムはともかく、2020年に向けて個人的に気になるのはやはり「コトバ」の問題である。駅や街での表記、アナウンスがまだまだ外国人観光客の急増に追いついていないと感じるのだ。電車や地下鉄といった「日常」で、明らかに日本語がわからない様子で立ち止まっているのを見るたびに、「不便さを感じているんだろうなあ」と心配になってしまう。これも、日本語教師としての老婆心かも知れないが。

 

ところで、先日テレビで「京都に外国人観光客への注意喚起の看板が立てられた」と話題になっていた。ゴミのポイ捨て禁止のほか、祇園を歩く舞妓さんに近寄って触る外国人観光客への対策だと言う。地元関係者は「観光客の方々が不愉快にならないように」と語り、実に控えめなイラストが看板に描かれていた。果たしてそれで意図が伝わるのか、ちょっと心配になる。日本人はついつい相手に「察し」を期待するが、それは日本人独特の美徳。あえてハッキリ伝えることで解決することも多いはずだ。あと4年半。日本人の「伝える力」にも課題が残されている。

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