日本語教師の日常エッセイ「チリもつもれば」No.33 | 日本語教師養成講座のアークアカデミー

No.33 髪切り事情

2016/07/19

私見だが、女子留学生はロングヘアが多い。単に「ロングが好き」「髪が長いほうが女性らしい」という理由のほかに、美容院に頻繁に行かなくてもいい、という理由も考えられないか。あくまで、私見であるが。


実際、日本の物価の高さで、学生たちが嘆くことの一つに「美容院」がある。男子ならば、1000円カットで知られる床屋さんがあり、中には同じ寮に住んでいる友だちに切ってもらった、という学生も少なくない。しかし、女の子にとってヘアスタイルは、もっと重要かつ繊細な問題だ。


そんなことを考えていたら、海外で暮らしていたときの美容院がふと懐かしく甦ってきた。台北で暮らし始めたばかりの頃、近所にあった『日式(日本式)美容院』に行ってみると、「イラッシャイマセ~」と日本語で客を迎えるだけの、ごく普通の美容院だった。確かに発音はよかったが、それだけで堂々と『日式』を謳うとは、なかなか商魂たくましい。


ベトナム・ハノイでは、普段は中心部にある英語が通じる美容院で、カット2000円ほど。現地の物価を考えると、そうそう頻繁には行けない。そこで、前から気になっていた地元色満載の店に行ってみることにした。店の中が丸見えのオープンな空間である。シャンプーは水道ではなく、容器に溜めてあった謎の水を利用するのだが、そこは失礼ながら「カットのみ」をお願いして、代金はなんと約50円なり。鏡の中の仕上がりは悪くない。「これで50円なら大満足」と帰宅したが、1週間後に早くも異変が。襟足が恐ろしいほど不揃いに伸びる、というオチがついた。


さて、私が最も美容院代にお金を使ったのが、他でもないロシアだった。知り合いに紹介された美容院が、かなりの「セレブ向け」だったのである。あるとき、レジのスタッフが私に金額を告げるなり、そこに居合わせた地元セレブたちに驚かれ、あからさまに二度見されたことがある。カット&カラーリングで2万円近く。分不相応な選択を後悔した。

 

ところで、留学生のカット事情の続き。先日はなんと「このカット、500円以下です」という男子学生が現われた。アパート近くの床屋さんで「平日・昼間限定サービス」とのこと。髪型の指定はできず「〇センチ切って」という注文のみらしいが、それでも安い。職人風に刈り上げられたその髪に、その店を見逃さなかった学生のたくましさを感じた。

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