No.160 気がつけば期末 | 日本語教師養成講座のアークアカデミー

No.160 気がつけば期末

2022/06/27

4月期に入ってから学生の来日が続き、学校に久しぶりの平穏、かつ明るい空気が戻ってきた。教師としてもホッとしたためか、それとも時間の流れに疎くなったのか、気がつけばもう6月下旬、期末である。もっとも、現在私が担当しているクラスは、留学クラスとは別のカリキュラムであり、期末のバタバタ感はない。だが、とりあえず、この3か月の学習成果を確認する時期ではある。そんなわけで、「学習発表会」が全クラスで開催され、それに先立ち、教務から「担当クラス以外の発表会にも参加を」という旨のメールが来た。各クラスの日程と発表テーマ一覧も添付されている。


私は、2つのクラスに「〇」をつけた。1つは担当しているクラス、もう1つは、担当してはいないが、ビジネスクラスである。ここには、3月まで担当していた留学クラスの2人の学生がいるのだ。以前2人がいた留学クラスの学生は、ほとんどが3月に卒業した。2人は、ずっと来日できないままオンラインで授業に参加していたのだが、ほぼ欠席なし。授業中に「ここで、何か発言がほしいな」というとき、察したように笑顔で手を挙げてくれた2人に、どれだけ助けられたことか。しかも、学期の最後には「先生、ありがとうございました」という丁寧なメッセージを寄せてくれていた。


その2人もやっと来日でき、学校で「対面」を果たした。どちらも、画面よりずっと魅力的でキラキラしている。「授業はどう?」と聞いてみると、1人が「他の学生のレベルが高すぎて…」と自信なさげに言う。たしかに、ビジネスクラスは日本語力だけではなく、キャリアもレベルが高い。ただ、彼女の謙虚さに秘めた強い意志があれば、クラスメートからの刺激を受けて成長できるはずだ。


発表当日、そんな親のような気持ちで見守るつもりだった。ちなみに、テーマは『魅力の伝わる自己PR』。授業は対面で行われているが、「観客」はオンラインでの参加である。私も自宅で、リラックスして観ることができるか…と思いきや、1人発表するたびに、「観客」が1人ずつコメントを求められるらしい。実は、私はコメントがあまり得意ではない。ふざけているワケではないのだが、理路整然とは程遠く、感覚的でザックリとした内容になってしまうのだ。ゆえに、コメントの順番が近づくたびにドキドキしてしまい、ゆったりと学生を見守るどころではなくなってしまった。


ところで、春に来日して早々、アルバイトを始めている学生もいる。勉強との両立や、人間関係でも大変なこともあるだろうが、ぜひ頑張ってほしい。私の自宅のすぐ隣にコンビニがあり、知り合いではないが、レジでよく見かける留学生が、併設のコインランドリーで掃除しているところに居合わせた。「ごくろうさまです」と声をかけると、小さな「どうも」と、笑顔が返ってきた。親心のようなささやかなエールが届いたのか、怪しいおばさんだと思われたのか…それは定かではないが。