神様からのご褒美 (杉浦 真弓) | 日本語教師養成講座のアークアカデミー

神様からのご褒美 (杉浦 真弓)

2011/04/10

12月17日の昼下がり、ピンポ~ンと鳴ったインターホンに出てみると「日本郵便です。」という返答。ひょっとして?いや、まさか? 話には聞いていました。受かれば封筒、落ちればハガキが届くと・・・。

ハンコを握り締めてドアを開けた私に「ハンコはいらないですよ。ポストに入らなかっただけですから・・・」と、笑いながら日本郵便のお兄さんが差し出した封筒。ドキドキしながらモタモタと開封して「合格」の二文字を発見!「ヒェ~!?」喜びよりも驚きに包まれた瞬間でした。落ち着いてからよく見ると、封筒の表に『結果通知書・合格証書在中』としっかり赤字で印刷されていたのでドキドキする必要はなかったのですが、それさえ目に入らないほど動揺していたようです。

私が日本語教師という職業に出会ったのは2010年の早春でした。長年企業で経理担当のOLをしていた私は、このまま定年まで同じ仕事をしていくことに疑問を感じていました。「数字を相手にするんじゃなくて人と関わる仕事をしてみたい。この先一生続けられる仕事をしたい。そのためには何か資格を取らなくっちゃ。」そんな短絡的な発想でネットを検索していて「日本語教師」という五文字が目に飛び込んだ瞬間「あっこれだ!」と閃きました。そう、きっかけはインスピレーションでした。

自学自習ができるタイプではなかったので働きながら土日を利用して通学、教育訓練給付金を受けるために一年で修了できる学校、私の希望にピッタリだったのがアークアカデミーでした。「この歳になって勉強なんてできるだろうか、働きながら通い続けられるだろうか。」ぎりぎりまで悩み、不安を抱えながら2010年7月に養成講座に入学。何十年振りかの学生生活は、様々な年代のクラスメートに出会い、とても楽しく学習して心が若返ったような気がしました。入学時にスタッフの方に一年間の学習スケジュールを作っていただき、その通りに履修して無事に修了。教育訓練給付金を受け取ることができたので、それを使って検定演習科を受講しました。

検定合格は入学当初からの目標でした。人生半世紀を過ぎて覚えていることより忘れていくことのほうが多い年頃、今年合格できなければ来年はないと思っていましたが、演習科が始まってもすぐに勉強する気にはなれませんでした。間際にならないとやれないタイプなのです。

そんな私の行動を夏から振り返って見ますと・・・

7月・・・検定演習科受講開始。7月末で退職予定だったので、会社を辞めるまでは忙しいから辞めてから勉強すればいい、と自分に言い訳をして先延ばし。

8月・・・少しでも早く学習者に関わりたくてEPAのチューターに参加。友だちから「この時期に?」と呆れられる。

8月~9月・・・会社を辞めたにも関わらずイマイチやる気が出ない中、無謀にも採用試験に応募。その試験準備に追われて検定の勉強は週一回の検定演習科の授業で精一杯という有様。友だちからは「またこの時期に?」と更に呆れられる。

9月4日(模試)・・・当然のことながら結果は合格ラインに届かず。しかも記述は見事?0点。とにかく何か書いておけば少しは点数がもらえるだろう、との甘い考えを嘲笑うかのような『0』の文字にショックを受けつつも、同封された模範解答と比べて「そんなに差があるとは思えないけど?」とやっぱり自分に甘い。これからちゃんと勉強すればなんとか合格できるだろうと楽観視。

9月~10月・・・狭き門を太い身体でこじ開けて採用試験突破。しかし自分の力量不足と不甲斐なさを痛感しながら授業準備に明け暮れる毎日。当然、試験勉強などする余裕は全く無し。もう検定は捨てた!と腹をくくる。

10月22日・・・とにかく試験の前日くらいはちゃんと勉強しなくっちゃ、と朝から一切のことを放り出して泥縄で勉強。1ヶ月ぶりの勉強で寝るまでに問題集を一冊終らせた。この日までに使った問題集はこの一冊と検定演習科受講時にやった昨年の過去問のたった2冊のみ。買ったのに全く手をつけていない残り2冊の問題集は「来年使えばいいや」と不合格を確信していた。

10月23日・・・検定試験当日、天下の東大駒場キャンパスで受験。試験会場で私の席がど真ん中の一番前だったことがちょっと嬉しくて、いい気分で試験に臨めた。

上記の通り、冗談ではなく試験前1ヶ月は演習科のテキストすら開くこともなく、全く勉強しませんでした。一夜漬けならぬ一日漬けのみ。ですから合格できるとは当の本人も家族も予想だにしていませんでした。合格率が示すように、勉強しなくても受かるようなそんな生易しい試験ではありません。では、試験勉強をしていなかったのに私はなぜ受かったのか? それはまず第一に「運がよかった」ということ、そして第二は「授業態度がよかった」ということだと思います。

養成講座を受講するときに自分に2つノルマを科しました。1つは100%の出席率で受講すること。振り替え制度を使い、ときには有休を取って横浜校まで出向いて授業を受けました。お陰で見事100%達成です。もう1つはなるべく前の方の席で授業を受けること。月~金が仕事、土日は養成講座というスケジュールだったので自宅学習をする時間も気力もないと思い、それならせめて授業だけはしっかり聞こうと決めました。
そのためには一番前に座らなくっちゃ!単純ですがそう思って、前の方の席に座るために授業の30分近く前に教室へ入りました。先生のお話を一番近くで聞くことで、老化した脳ミソも刺激を受けて多少は活性化したようです。尤も一番前に座っていても眠たくなるときはなるんですけどね(笑)。
検定演習科でもなるべく前の席を確保しました。試験当日、私の席が教室の一番前で嬉しかったのはこの理由からです。いつもと同じような席に座れて、なんだかツイているって思えましたから。

このように、私は試験勉強はしませんでしたが、授業態度だけは良かったんです。そしてその結果、自分でも気付かないうちに基礎知識が身についていたようです。本試験では、頭の中のあちこちに引っかかっていた微かな記憶に救われました。

皆さん、どうか日々の授業を大切になさってください。アークの理論科目の講義をしっかり聞いていれば、必要な知識は充分に身につきます。実技科目の授業に真面目に取り組めば、検定の実技問題に対応できる力が培えます。更に検定演習科を受講すれば鬼に金棒です。但し、私のように運を天に任せるような合格ではなく確実な合格を得るために、他の皆さんが書かれた合格体験記の学習法を参考に、授業+試験勉強で準備をなさってください。そうすれば一発合格間違い無しです!

まさか私がこうして合格体験記を書くとは思ってもいませんでした。皆さんの受験勉強の参考にはなりませんが、こういうこともあるという一例として書かせていただきました。今回の合格は、一年間毎週土日に朝早く家を出て、はるばる茨城から通学した私へ、神様がご褒美をくださったんだと思います。例え最下位だったとしても合格は合格、合格証書に恥じないようにこれから研鑽を積んでいかなくてはいけないと気持ちを引き締めております。

後になりましたが、養成講座及び検定演習科でご指導くださった先生方、大変お世話になりました。先生方の授業を受講したからこその合格です。ありがとうございました。

杉浦 真弓さん

日本語教育能力検定試験
第25回 平成23年度 合格