No.203 「しんしん」と雪は降る | 日本語教師養成講座のアークアカデミー

No.203 「しんしん」と雪は降る

2026/01/20

日本語には実にさまざまな擬音語・擬態語があるが、最近とても気に入っているものに「しんしん」がある。辞書には、いくつかの意味の最後に「雪が静かに降り積もるようす」とある。私の故郷は雪国で、年末年始には帰省するのだが、雪国の冬といえば、強烈な風と雪のまさに「吹雪」も多く、容赦なく前から横から吹き付けてくる。子どもの頃は学校の行き帰り、それがイヤでイヤでしかたなかったものだ。だが、今回の帰省では、いつもより穏やかな天気の日が多く、朝起きてカーテンを開けると、夜中に「しんしん」と積もった雪が、美しい白銀の世界を作り上げていて、ちょっと感動した。

ところで、「しんしん」は擬音語なのか、擬態語なのか。「静かに降る様子」なら擬態語になるのだろうが、それが降る音を指すなら擬音語とも言える。年が明けたある日、あまりに外が静かなので夜中にそっと窓を開けてみた。すると、シーンと静まり返った空気の中で、雪が空から落ちてくる「声」が聞こえたような気がした。それはまるで子どもの頃に読んだ昔話の世界のようで、新しい年からのちょっとしたプレゼントのようにも感じた。おそらく、「しんしん」を留学生に教える機会はほとんどないだろうが、できれば彼らにも、「しんしん」と降る雪の声を一度聞いてみてほしいと思う。

さて、故郷で少しのんびりした後は東京に戻り、ほどなくして1月期が始まった。1月期といえば、2019年から関わってきた準備教育課程が3月をもって終了となるため、2024年にスタートした現在のクラスがラストになる。1年半または2年という時間を同じ教室で過ごした仲間だけに、学生同士にも特別な思いがあるだろうが、教師にとってもやはり特別な思い入れはある。例年ながら、既に昨年中に合格を決めた学生もいれば、未だに受験先も定まらない学生もいる。今年の1回目の授業は木曜日で、私が担当だった。一般留学クラスの場合は初日は担任が入るのだが、準備教育課程はその曜日の担当教師が入ることになっている。果たして年明けの出席率は…と少し心配もあったが、全員出席。いずれにしても、3月の卒業式にはみんなが笑顔で「有終の美」を飾れることを祈っている。

話は変わるが、年が明けた某日、大学時代の登山サークル仲間の飲み会があった。10日間の夏合宿で一緒のパーティ、まさに「同じ釜の飯を食った」メンバーのうち5人で、その合宿は大型台風に直撃され、良くも悪くも忘れられない合宿だった。数十年ぶりにそのメンバーが集まったというわけで、すっかり時を超えて学生時代に戻り、咲いた話は終わりそうにない。その際、一人が当時の「夏合宿反省記録書」をコピーして全員にくれたのだが、なんとそれがパソコンでもワープロでもなく、「手書き」。記録係が私だったようで、今も当時も変わらぬ悪筆がしっかり残されており、時の流れを突き付けられた。ここにあるのは、パソコンのない頃の思い出。恥ずかしくも懐かしい宝物である。

「しんしん」と雪は降る