【第10号】タイ北部 パヤオ大学 田中 博之先生、設楽 依里先生
2014/10/20
田中 博之先生
日本語教師養成講座
2007年4月修了
設楽 依里先生
日本語教師養成講座
2012年4月修了
海外赴任研修修了
2年生と
授業風景
4年生実習発表会
パヤオ湖景観
教室棟・研究棟エリア
パヤオの正月のタンブン風景
大学図書館
大学正門付近
アークアカデミーのみなさん、こんにちは。タイ北部のパヤオ大学からお便りさせていただきます。2007年卒の田中と2012年卒の設楽です。
いま、パヤオ大学では、日本語専攻として約170名、副専攻として約200名の学生が日本語を学んでいます。これに日本語科の教員11名(タイ人7名、日本人4名)で対応しています。日本人教員はおもに日本語専攻の1年生と2年生を担当し、日本語初級コースの運営と開発を任されています。これにはアークアカデミーで学んだ日本語教師としての基礎が大いに役立っています。
田中:わたしは2009年に赴任してきました。そのとき、ここはナレースワン大学パヤオ分校でまだこじんまりとしたものでした。赴任当日、タイ北部の田舎町パヤオからバスで20キロ離れた大学を目指し、どうにか大学の正門にたどり着くことができました。さあ事務所に行こうと守衛に聞くと、事務所は5キロ先だ、バスに乗って行けと言われました。まわりを見れば確かに、立派な門のほかに建物は見当たりませんでした。ここは敷地だけがやたらと広い、これが第一印象でした。設楽さんはどうでしたか。
設楽:わたしは2012年に赴任してきました。ちょうどパヤオ大学が14学部、2万4千人規模の国立総合大学として独立したときでした。山がキャンパスに変わり、学部ごとの教室・研究棟、学生寮、大学病院、全寮制付属高校、スポーツ施設など、そこら中で工事をしていました。また、学生もすでにたくさん集まって来ていました。言ってみれば、総合大学としての入れ物がほとんどでき、その中に学生も入ってきたという感じでした。それから2年たった今では、つぎの段階に移り、教員や指導内容の充実が求められてきていると感じます。そんな中で、日本語科での日本人教員の役割について、田中さんはどうなっていくと思いますか。
田中:日本人教員には2つの役割があると思っています。1つは、学生の日本語運用力の向上のためのトレーナーとしての役割です。これはアカデミックな知識を伝えるというより、日本語が使えるように効率よく学生をトレーニングするものです。アカデミックな知識を伝えることについては、タイ語での説明力が必要なので、タイ人教員の方が適していると思います。一方で、日本語運用力のトレーニングについては、日本語教師としての基礎を学んだ日本人教員の方が効率的に行うことができます。
もう1つの役割として、指導方法や指導内容の研究・開発があります。学生の適性や能力、進路希望、大学の方針、学生を取り巻く社会環境などを考えながら、パヤオ大学に適した方法、タイの大学に適した方法を作っていくことです。大学には知識を伝える機能と新しい知識を作り出す機能の両面があるので、大学としても外国人教員に研究を奨励しています。外国人教員が希望すれば、タイ人教員と同様に研究のための機会と予算をくれます。これはこの大学で働くおもしろさでもあると思います。
設楽:確かに、いろいろ試しながら、指導の方法や内容を改善したり開発したりできるのはおもしろいことですね。でも、一方で難しさも感じています。パヤオ大学は北部地域を中心に教育機会を広げることに力を入れているので、門を広げて多くの学生を受け入れています。そのため、日本語科に入ってくる学生の適性や能力には大きなばらつきがあります。学生の能力や適性をどのように評価したらいいのか、教員数・クラスサイズ・レベル分けのバランスをどのようにとったらいいのか、どこに焦点をあててどんな指導内容にするべきなのか等、なかなか答えが見つかりません。1人でどうこうできるようなものでもありませんし、教員がチームとして取り組まなければ、先に進むこともできません。
パヤオ大学の日本語科はいろいろ解決すべき問題をかかえながら、少しずつ変わってきています。どこに行きつくかまだよく見えませんが、きっといい方へ向かっているものと思います。パヤオはちょっと遠いかもしれませんが、一度遊びに来て、学生と会話でもしてみませんか。きっと、うちの学生のホスピタリティ精神と素直さを感じていただけると思います。ARCのみなさん、いつでも歓迎します。