【卒業生インタビュー/海外勤務】カメルーンの日本語学校から(6)卒業生を訪ねて | 日本語教師養成講座のアークアカデミー

【卒業生インタビュー/海外勤務】カメルーンの日本語学校から(6)卒業生を訪ねて

2026/10/20

玉井 真理子さん
日本語教師養成講座 2023年1月卒業

「カメルーンの日本語学校から 珍問答・禅問答」第5回の内容はこちら

「カメルーンの日本語学校から~はじめての一時帰国その後~」第4回の内容はこちら

「カメルーンの日本語学校から~半年を生き延びて~」第3回の内容はこちら

「カメルーン便り 続編~あこがれのアフリカから②~」第2回の内容はこちら

「カメルーン便り~あこがれのアフリカから~」第1回の内容はこちら

私はカメルーンの日本語学校での仕事に一区切りつけて帰国しました。ちょうど1年間の滞在でした。「先生、いつカメルーンに帰ってきますか?」と聞く学生には「日本で会いましょう」と答えつつ、後ろ髪を引かれながら帰ってきました。

 私がカメルーンで日本語を教えていた学生は、ほとんどが日本留学を目指していました。この4月にも30人ほどの学生が日本留学を実現させました。北は福島から南は熊本まで、日本のあちこちの日本語学校に入学したのです。

 カメルーンの日本語学校では、遅刻は当たり前。それどころか、雨が降ると登校する学生の数自体が減ってしまうのです。私にはなかなかなじめない文化でした。卒業生たちは遅刻しないで学校に通っているだろうか、毎日休まないで授業に出ているだろうかと心配でしかたありませんでした。
 そんなふうに気をもんでいたおりもおり、卒業生の一人が日本語学校の入学式で新入生を代表して誓いの言葉を述べることになったというニュースが舞い込みました。なんとうれしい!私は喜び勇んで、さっそく入学式に参列させてもらうべく福島県の郡山へ。

郡山の日本語学校の入学式で誓いの言葉を述べる学生
郡山の日本語学校の入学式で誓いの言葉を述べる学生

カメルーンの日本語学校で勉強しているころから、確かに優秀な学生ではありました。なにしろ、校内スピーチコンテストで「日本語が私を作る」という深遠なタイトルのスピーチを披露し、みごと優勝した経歴の持ち主です。しかしだからと言って、世界各国から集まった留学生の中でそんな大役を果たせるんだろうか。

そんな私のドキドキをよそに、彼は堂々と、そしてきれいな日本語で日本へのあこがれと将来の希望を語りました。アニメをきっかけに日本に興味を持ったこと、日本について調べるうちに、日本で勉強したい気持ちが高まっていったこと。日本語を学んでさらに日本文化への関心がふくらんだこと。

彼は日本語を勉強したら専門学校に進学し、自動車整備士になりたいという手堅い夢を持っています。成績が優秀なら系列の専門学校に授業料を大幅に免除してもらって入学できるらしく、彼にはぴったりの日本語学校なのです。

カメルーンの日本語学校から入学したもう一人の学生と二人でアパートをシェアして暮らし、二人とも毎日自転車で通学しているようです。私がおそるおそる遅刻していないかどうかを担任の先生に聞くと、遅刻どころか誰よりも早く学校に来て勉強しているというのですから、もう驚いたのなんのって!

卒業生を訪ねて驚いたことは、ほかにもあります。

 「私、アルバイトしています!」

姫路市にある日本語学校に入学した女子学生が言います。やはりカメルーンで私が日本語を教えた学生のひとりで、姫路城が見えるレストランで食事をしながらの会話です。同じ姫路の日本語学校には、彼女を含めて3人が入学しました。

姫路の日本学校に入学した学生3人
姫路の日本学校に入学した学生3人

「えっ、もうアルバイトはじめてるの?」と私がたずねると、回転ずしのチェーン店で働いているというのです。また別の男子学生は、宅配業者の物流センターで深夜に荷物の仕分け仕事をしていると言うし、もう一人もアルバイトを始める具体的な予定があるとのこと。

「アルバイトできるほど日本語できないでしょう?」という言葉をぐっと飲み込んで聞いていると、さらに条件のいいアルバイトを探している、明日はその面接などと言うので私はさらにのけぞりました。日本語学校入学のためのオンライン面接の練習はずいぶんしましたが、アルバイトの採用面接の練習など、少なくとも私はしたことはありませんでした。

たくましく日本の生活になじみつつある卒業生を見て、「深夜のアルバイトはほどほどに」「早く接客もできるようになるといいね」などと、だれでも考えつくようなことしか言えなかった私です。その後しばらくして、カメルーンに関連した地域のイベントを、民族衣装(?)を着て手伝っている卒業生の写真が送られてきました。

こんなふうに私は時間を見つけて、全国に散っているカメルーンの日本語学校の卒業生を訪ね歩いています。慣れない異国の地で体調をくずす学生もいて、私のところには毎日のように連絡が入ります。お金がないと泣きついてくる学生もいます。進路に迷っているというメールも来ます。

しかし実際に会ってみると、みんな元気そうで私をホッとさせてくれます。遅刻も欠席もせずに学校に通っているというので、1年間口を酸っぱくして「雨が降っても遅刻は遅刻!」と言い続け、それでも遅刻が減ることがなかったカメルーンの日本語学校はいったいなんだったろうとなつかしくなります。

彼らにとって、気候も風土も習慣も違う日本での生活ははじまったばかり。遠くアフリカのカメルーンからやってきた彼らを待ち受ける苦労は、決して少なくないはずです。卒業生たちに幸多かれと祈らずにはいられませんでした。

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