合格してから思う、合格のコツ(國橋さゆる) | 日本語教師養成講座のアークアカデミー

合格してから思う、合格のコツ(國橋さゆる)

2017/03/09

おかげさまで、2016年の日本語教師能力検定試験に合格することができました。合格して、ほっとして、ここまでの時間を思い返すとき、もっとこうすればよかったのでは、といろいろ考えてしまいます。その点も交えながら、みなさまの次回の検定合格の役に立てますよう、願いながらこれを書かせていただきます。一文でも、何か残るものを見つけていただけたら、本当に幸いです。


最初に、これがみなさんにとって何回目の検定試験になろうとも、次回の試験で合格しようと思い、合格するだろうと思えることが、意外と大切です。試験は毎年あると思ってしまうと、毎年恒例の行事のように試験に挑戦することになってしまいます。


ご存知のように、日本語教育検定試験の特徴は、試験時間の長さと、カバーしなければならない知識の範囲がとても広いことです。検定試験は「試験1」「試験2」「試験3」の3部に分かれていますが、テストされる内容の性格が違うので、それぞれに合わせた勉強法が効率的だと思われます。


「試験1」90分 100問

まず、「試験1」ですが、ここで広大な知識を試されます。日本語の「文法」についてはもちろんですが、「教育学」「認知心理学」「社会学」「歴史」「法律」など、幅広い知識をもっていなければなりません。しかも、90分間に100問なので、ひとつの問いにたいしてあまり時間をかけられません。


とにかく覚えるべきことが多いので、仕方ありません、ひたすら覚えてください。受験勉強を思い出して、まず、参考書のような総合的な教材で内容をざっくりと掴み〜あまりの分野の広さにしばし途方にくれてから〜人名、年代、国の名前から専門的な用語まで、用語集などで耳慣れない言葉の意味を暗記してください。同時に、練習問題などで、問題の解き方に慣れるように心がけると、得点アップの助けになるかと思います。


退屈なようですが、勉強していくと、自分の思わぬ興味に気がついたりして、意外と楽しいこともあります。


「試験2」30分 音声

音声が流れ、それを聞きながらマークシートを塗りつぶしていくタイプのテストです。音声は待ったなしで流れていってしまうので、途中で判断つかずに立ち止まると、その後全部聞き逃すという失敗をすることになります。


一発で正解がわからなければ、あっさり切り捨てて、次に集中しましょう。音の高低を聞き分けるテストでは、音声が流れるまでの短い時間を使って、選択肢をチェックしておきます。


選択肢は4つですが、注目するのは、3点。

   1.最初の音は、上か下か。
   2.最後の音は、上がるか下がるか?
   3.真ん中あたりに、上下のばらつきがあれば、
    各選択肢にまたがるように縦に線を引いて注目します。

これをやっておけば、最初の音でだいたい半分を消去できます。聞くべき音をだいたい決めておくと、迷った時の決め手にもなります。


私が特に苦手だったのは、顔のスライス図や、アルファベットに似た発音記号の表を使った発音のテストでした。何をどう勉強したらいいのかもわからない。そこで、この発音問題が得意という友人に助言をもらいました。「全部、覚えればいい。大した量ではないのだから、見なくても書けるくらいにしっかり覚えてしまうべし」とのことです。


集中すれば、3時間くらいで覚えてしまいます。後は、忘れる前に確認できるようにトイレにでも表を貼っておけばいいのです。追い込まれる前に、早めに終わらせてしまえる作業のひとつだと思いますので、今年の受験を考えている方なら、さっそく表を手書きして、この週末にでも覚えてしまうと、後々とても楽になります。


とはいえ、音声の問題は音声教材なしでは、点を伸ばせません。音声教材は、手近なスマホに入れて、聞きなれるようにしました。


「試験3」120分 80問+小論文

頭がクタクタに疲れてきた頃、この「試験3」に入ります。「試験1」でテストされる知識を統合して扱う問題が多く、1問1問にグッと重みが出てきます。


個人的な印象ですが、実際の日本語教室の現場で直面する問題と解決法、解釈などを問われる問題が多いように思います。


ふつうに考えると、やはりここは、日々教材作成に苦心を重ねている現役の先生方が有利になるのかもしれません。ですので、養成講座を受けている方は、教案作りや実習の機会を大切にしてください。また、日本語学校でよく使われる教材に、しっかり目を通しておくのもおすすめです。

私感になりますが、問題を解く上で、いつも心にとめておくといい大前提があると思います。


それは、日本語学校の教室というのは、様々なバックボーンを持った人が集まっていて、教師は、それぞれの事情を理解しようとし、思い図り、適切に対応しようとする気持ちが必要だということです。


目の前の学習者が、どうしてここに通ってきているのか。進学のためか、好きだからなのか、生活が日本にあって必要に迫られているからなのか。もしくは、漢字という文字に慣れているのか、何かしらの第二言語を勉強した経験があるのか。


そいういった様々な事情を考えた上で問題に向き合うと、おのずと、何か正解で、何はおすすめできないかを判断できるようになると思います。


小論文;400文字 配点20点

決められた時間で、決められた文字数で、決められたテーマについて書かなければなりません。


バランスを考えると、小論文に使える時間は25分前後かと思います。配点が大きいので、大きく落としたくないですが、満点を狙う勢いで時間をかけるのもリスクが高い部分です。


最低ラインは、字数が400字から大きくずれることがないように調整すること、内容については、問題を理解し、対応した文章になっているか、その2点をクリアすることだと思います。


まとまった文章をいきなり書き出すのは難しいので、私は、配られる原稿用紙に薄く線を引いて、ざっくりと3つのセクションに分けました。最初の部分に「自分の結論、思うところ」を。次に「その理由や根拠」を書き、最後に「問題の背景や違う視点の存在」にも言及し、「今後の展望」などについて触れて、字数をまとめます。


それぞれ130字程度の文を書けばいいので、心理的ハードルがグッと低く感じられ、字数のコントロールも容易になります。なお、それぞれのセクションの内容について、短いメモを当てはめてから書き出すと、より楽に早く文章を作れるようです。


検定試験は1日がかりの長丁場です。体力と集中力の勝負です。本番テストのように時間を計って、ある程度まとまった時間に集中する練習をしておいてください。試験直後は、「3年は日本語のこと考えたくなくなる」くらい、頭がクタクタになります。


蛇足ですが、「自分対策」について書きたいと思います。どこへ逃げても、「自分」はついてきます。私は、もう長年「自分」をやっているので、その性質はある程度わかっていて、うんざりもしています。


いつも、「続かない」し、「後回し」にする奴なんです。そこで、モチベーションの保つために、検定試験対策講座に入りました。同じ目標を持った人たちと、それを後押しする先生のエネルギーのようなものを、定期的に感じることで、なんとか試験当日にこぎつけたような気がしています。


その分、お金はかかりましたが、モチベーションを保て、困ったときに相談できる友人を得た上に、時間をかけずに合格できたことを考えると、いい選択だったと思っています。


みなさまも、自分の長所も短所もよくわかっていると思います。数ヶ月、もしくは1年単位のチャレンジになるかと思うので、不安な方は「自分」が逃げ出さないように、「自分対策」もおすすめします。


最後になりましたが、実は、私にとって、日本語教師検定試験を受けて得た一番の財産は、毎日学ぶ習慣ではないか、と思っています。よりよい教室活動を探し続けたいので、これからも学びを楽しんでいくつもりです。みなさまの検定への挑戦が、合格と、それ以上の人生の収穫になりますことを。

 

國橋さゆるさん

日本語教育能力検定試験
第30回 平成28年度 合格