No. 83 ニューカマーたち
2018/08/06
2018年の夏が、これほどの酷暑になろうとは誰が予想しただろうか。日中は外を歩くだけで、足元からジリジリ焦げそうだ。朝も駅から学校に向かう間に体力を消耗し、学校に辿り着いとたんに汗がどっと噴き出てくる。教室でもエアコンの調整がいろいろ面倒だ。というわけで、夏は扇子が必需品。特に今年は猛暑で酷使しているせいか、マイ扇子も疲れ気味である。
扇子といえば、先日こんなことがあった。「今日も暑いですね」と言いながら、教室内を見渡す。と、一番前に座っていた中国の新入生A君の扇子に目がいった。閉じたまま机の上に置かれているが、それが放つ存在感は半端ではない。大きさは、昔懐かしい何とかトリオのハリセン並み。恐らく、開いたら中国の有名な漢詩や水墨画が描かれているのではないか(推測)と思われた。私のあまりの驚き様にA君も苦笑いし、残念ながら扇子を開いてはくれなかったが、もし再びその扇子を持参したら、今度こそ見せてもらおう。もしかして、お宝鑑定番組に出せるほど立派な「作品」かもしれない。
ところで、夏といえば、毎年6月中旬から7月まで、留学クラスとは別の日本語研修にも関わっている。学校に通うよりも通勤時間は長くなり、電車の本数が少ないこともあって、いつもより1時間ほど早く起きている。が、今年はこの暑さで目が覚めてしまうため、早起きも全く苦にはならなかった。そして、今年の研修生たちは、なかなかユニークな面々が多く、最初から最後まで、こちらも楽しみながら教壇に立つことができた。
まず1回目の授業での自己紹介。名前や出身地、趣味のほかに「日本でどんなことをしたいですか」と聞いてみた。彼らはこの研修に合わせて来日し、今後は日本で働くことになる。例年は「旅行したいです」「祭りが見たいです」といった答えが多いのだが、今年は「日本は完璧な国だと思いますが、本当にそうなのか生活しながら知りたいです」という答えが。ユニークな発想に感心し、すぐに彼女の名前を覚えた。自己紹介として大成功である。
そして、研修最終日。最後の挨拶も終えて無事に授業終了。が、3人の研修生がニコニコしながら教室に残っている。「?」と思ったその時、「先生、私たち歌います!」と宣言し、突然『365日の紙飛行機』を歌い始めた。半ば硬直状態で3人を見つめる私。可愛いサプライズだったが、結局、予想以上にハモりが見事だったことが、私にとって一番のサプライズであった。