No. 84 『まなぶ』に学ぶ
2018/08/23
最近「学んでいないなぁ」と反省する。もちろん、日々無意識には何かを学びながら生きているのだろうが、はっきりとした目的をもっては学んでいない。人と机を並べて何かを勉強したのはいつかというと、日本語教師養成講座に通った20年以上前に遡る。日本語学校という教育の現場にいるにもかかわらず、学びから遠ざかっているというのは情けない話だが、「現場にいることで満たされてしまっている」とも言えるかもしれない。
そんなことを自問自答しながら、暑さを言い訳にして漫然と過ごす私の目に飛び込んできたのが『まなぶ』だった。よく利用する映画館の予告で知り、迷わず観に行くことにした。映画『まなぶ』は、第二次世界大戦後の社会が混乱していた時代、何らかの事情があって義務教育を受けることができなかった人々が、何十年もの時を経て学ぶ姿を映したドキュメンタリー。現在は全国に2校のみとなった通信制中学の一つ、東京都内の中学校が舞台だ。
そこに登場する人々の背景はさまざまだ。ただ、共通しているのは「学びたい」という強い意志をもって、自らそこに来たということである。当然ながら、何かを習得するのは容易ではない。学校教育に戻るまでの長いブランクに戸惑う姿も、そのままリアルに描かれている。だからこそ、学ぶ楽しさを実感する表情もストレートに伝わり、生き生きとしていて羨ましいほどである。わずか1時間半で、さまざまな人生に立ち会えたような感動さえ覚える。
また、この映画は学ぶ側だけではなく、その学びを支える教師の姿も伝えている。教える知識や技術だけではなく、まず自分よりも遥かに年上の「生徒」を尊敬し、学びを支えたいという気持ちがなければ、この教育の現場は成立しないだろう。そういう意味でも、私がこの『まなぶ』から学んだことは非常に広く深い。これをどう活かすかは、今後の私の課題なのであるが…。
実は、以前から勉強してみたいと思っていることがある。日本語教育とは直接関係なく、たった数か月の通信教育だ。にもかかわらず、あれこれ言い訳をして先送りしてきたことを反省し、この秋から始めようと決めた。と同時に、学ぶことができる幸せに、もっと感謝しなければならないと思う。
「All I want is education」―これは、『まなぶ』の1シーンに出てくる言葉だ。英語の教師から「生徒」に贈られたメッセージ。学びの先には、とてつもなく広い世界が広がっている。私もそう信じたい。