No. 86 キラキラの国 | 日本語教師養成講座のアークアカデミー

No. 86 キラキラの国

2018/09/20

やはり「佐藤さん」が一番であった。日本で最も多い名字の話である。「佐藤さん」「鈴木さん」が日本のトップ2であるというのは今さら言うまでもないが、改めて先日、某保険会社が5年ぶりに調査を実施、その結果が新聞で発表されたのだ。その調査によれば、全国には「佐藤さん」が194万人、「鈴木さん」が182万人おり、それに「高橋」「田中」「渡辺」と続く。


興味深かったのは、東日本と西日本の比較である。東日本では全国と同じ順位になるのだが、西日本は「田中」「山本」「中村」の順であるという。同じ日本でも随分と違いが出るものだ。ちなみに「山田」は12位である。


ところで、毎年携わっている夏の日本語研修でのこと。全員ベトナムからの研修生で、こちらが感心するほど日々熱心に学んでおり、教師としても実にやりがいを感じる研修である。が、一つだけ頭を悩ますことがある。名前である。悲しいかな、年々自分の記憶力が衰えているという現実もあるが、アインさん、ハインさん、フエンさん、ヒエンさん、フォンさん、フンさん、ラムさん、ランさんなどなど、似ている名前が多くて、とても覚えきれない。


しかも、ベトナム語は発音が実に難しい。それでも、ほとんどの場合は「日本人なら、こんなものか」と暗黙の妥協をしてくれるが、時には点呼で発音指導を受けることもある。名簿のカタカナ表記のまま読んでも、違う名前に聞こえてしまうらしい。さらに、「ラムさん」と呼んだつもりが、まったく違う方向からランさんが「はい」と答えたりして、自分の滑舌に自信がなくなったりもする。学生の名前とのプチ格闘は、今後も続きそうだ。


さて、日本人の名前の話に戻る。もともと日本人の名字は3万とも30万とも言われるほど種類があるが、下の名前も多彩化が加速している。しみじみとそう思ったのは、この夏、ジャカルタで開催されたアジア競技大会をテレビで見ていたときのことだ。2年後の東京オリンピックを視野に入れた代表選手たちの年齢は、10代後半から20代前半がメイン。その活躍ぶりも目を見張るものがあったが、それと同じくらい目が離せなかったのが名前だ。


以前から噂に聞いていたキラキラネーム世代が、第一線に登場してきたのである。自分では読めない名前は、アナウンサーの声を頼りに確認していく。「ついにこの時代が来たか!」と叫びそうになった。2年後の東京オリンピック、選手たちの記録だけでなく、名前もさらにキラキラ輝きそうだ。