日本語教育能力検定試験「マンボウ」問題

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異文化接触

登録日

2008年05月07日

問題

次の中国帰国者に関する事例を読み、問いに答えよ。
 

中国・瀋陽出身・男子、小学4年生。帰国者の両親と共に来日。入学する前に病気のため日本の病院で入院生活を半年あまり送っていた。幸い、外向的な性格もあって、周りの同年輩の子どもたちから、またたく間に言葉を覚えた。この児童は、それまで病気のために人間関係を半ば遮断されてきたが、遊んでいくうちに基本的な生活言語を身につけた
しかし、その後、日本語学級のない学校に転校し、そこでいじめを受ける。学校にはたくさんの人があるが、どんなにたくさんの人がいても、誰にも気持ちは通じない。誰も信頼できなくて、何かを言われれば、すべて悪口に思えてしまった。
 

問1)

文章中の下線部に関係する最も適当なものを選べ。

  1. Acquisition-learningHypothesis
  2. LimitedEnglishProficientStudent
  3. BasicInterpersonalCommunicativeSkills
  4. Cognitive/AcademicLanguageProficiency
     

問2)

文章中の中国帰国者およびその児童について述べたものとして不適当なものを選べ。

  1. 中国からの帰国者に対する日本語教育は、異文化適応の観点からも考えなければならない。
  2. 日本に定住し、将来、確実に日本社会に参入していくという立場から国語教育が優先される。
  3. 中国帰国者といっても、もともと日本にいて、中国から帰ってきたわけではないので、移民に近い存在といえる。
  4. 対象者が学齢期にあっても、日本語を母語としない者なら、国語教育ではなく、外国語としての日本語を教えるべきである。 
     

問3)

日本語指導を必要とする外国人児童に対する現場の処置、考え方として、最も適当なものを選べ。

  1. 一人校では、学年を下げて国語指導をするべきだ。
  2. 学習言語能力のためには、母語の保持、発達が欠かせない。
  3. 生活言語能力の習得を優先させるためには母語の喪失もやむを得ない。
  4. 日常会話ができるようになったら、取り出しをやめて一斉指導に切り替える。

解答

問1)3
問2)2
問3)2

問題解説

問1)

基本的対人伝達能力(BICS)の習得は比較的速いが、母語の保持・発達も伴わなければ、時間のかかる認知学習言語能力(CALP)の習得は難しい。この能力は、思考力養成のために欠かせない能力である。

問2)

中国帰国者とは、狭義には1972年の日中国交回復以後、日本に帰国した中国残留邦人(残留孤児・残留婦人)を指すが、広義にはその同伴家族、呼び寄せ家族も含める。青少年期まで日本で過ごした人を除き、孤児や家族たちは、中国語を母語とし中国文化を母文化としているので、帰国者の日本への定着は、異文化社会に参入する移民の立場に近いといわれる。

問3)

現場での問題点の一つで、日本語が表面的には流暢になっても教科授業での理解は難しい。児童の母語の発達、保持という面でも教育関係者の理解が求められるところである。

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