No.100 ズドラーストヴィーチェ! | 日本語教師養成講座のアークアカデミー

No.100 ズドラーストヴィーチェ!

2019/04/15

最近、巷でロシア語を耳にすることが多くなった気がする。先日もテレビから突然ロシア語が聞こえてきたので驚いて見ると、コマーシャルだった。ロシア語で電話応対し、店への道を説明しているのは日本人の花屋さん。と、ロシア人女性が「ズドラーストヴィーチェ(こんにちは)」と笑顔で現れるという内容だ。以前から、外国人がロシア語や「ロシア語風」の言葉を話すといったものはあったが、今回のような設定は珍しい。4年も暮らしていたわりには、笑ってしまうほどロシア語が上達せずじまいだった私だが、思いがけず耳にしたその響きが意外なほど心地よく、懐かしかった。そして数日後、書店で4月からのロシア語講座のテキストを購入した。


 

そんな矢先、ネットで興味深い記事を目にした。日本を訪れるロシア人が増えているというもので、日本政府観光局(JNTO)によると、2018年には前年比約23パーセント増、約9万5千人が訪日したという。もともと極東ロシアには親日家が多く、私が暮らしていたときにもロシア人から「日本は素晴らしい」「日本に行きたい」という言葉を何度も聞いた。だが、距離の近さに反してビザの規制や円高もあり、そう簡単に行き来できる国ではなかったのも事実だ。


 

それが、この増加率。しかも、現在の訪日ブームはどうやら極東に限ったことではないようだ。2017年1月からの日本政府のビザ緩和が理由の一つとなっているようで、これから来年の東京オリンピックに向けて、ますますロシアからの観光客や留学生が増えるに違いない。そんなときのロシア語学習は、まさにグッドタイミングである。正式なボランティアではなくとも、いつか、何かの役に立てたら嬉しいと思いつつ、久しぶりに古びた単語帳をめくっている。


 

実は、数年前からたびたび不思議な夢を見る。「またウラジオストクで日本語を教えることになった」という夢である。毎回、設定は微妙に変わっているのだが、夢の中で「またここで暮らすんだ」と実感して目が覚める。3か月に一回くらいと、かなりの頻度である。これまで暮らした中で、台北でもハノイでもなく、なぜかいつもウラジオストク。そんな予定はまったくないが、夢占いなら、さしずめ「潜在意識にある強い願望が夢となって表れている」ということなのだろうか。いずれにしても、ズドラーストヴィーチェ。しっかり基礎からロシア語を学ぼう。そして、再び暮らすことはなくとも、旅行者としてまた思い出の地を訪れたいと思っている。