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公立高校で日本語を教えるということ(後編)

2020/10/12

日本にも日本語教育を必要としている子どもたちがいることをご存じでしょうか。日本に住んでいながらも、日本語が壁となって悩んでいる子供たちは、たくさんいます。都内の公立高校で、外国にルーツを持つ子どもたちに日本語を教えている坂本先生にお話を伺いました。坂本先生が日本語教師になったきっかけから、現在のお仕事の様子までを前後編に分けてお送りします。

 

坂本昌代_都立高校の教え子一号
都立高校の教え子一号 (後列左が坂本先生)

1.公立高校の日本語教師として

都立高校で教え始めて今年で15年目になりました。現在は一校で選択科目としての“日本語”を担当し、もう一校で“国語総合”の外国ルーツ生徒クラスを担当しています。また、今年度からモデル事業として始まった“多文化共生スクールコーディネーター”にも採用されました。この仕事を始めたとき東京都には1校しかなかった外国人生徒特別選抜の実施校も、現在は8校に増えました。最初は外国人生徒向けの少人数クラスに対して「逆差別だ!」等と言われることもありましたが、今では国語や社会の時間に“やさしい日本語”で少人数指導をしている高校も随分と増えてきました。更に、ここ数年は彼らを取り巻く状況を報道で目にする機会も格段に増えました。とはいえ、依然として厳しい状況は続いています。高校進学率の低さ。そして、中退率の高さです。

 

 

2.私が最初に受け持った定時制高校の生徒は・・・

私自身も多くの生徒が学校から去っていくのを見てきました。日本語の壁や習慣の違いからトラブルになり、学校を辞めざるを得なくなるケース。日本語が分からないので授業に出てもつまらない、学校へ来るよりアルバイトでお金を稼いだ方がずっといいと言って退学するケース。理由は様々ですが、共通しているのは日本語力の低さ。そして、支えてくれる日本の友人や先生がいないという事です。

私の初めての生徒も、残念ながら一人は退学してしまったのですが、パキスタン出身の彼女は今では生徒というよりもママ友のような存在で、十年以上つきあいが続いています。彼女は日本人男性と結婚し、三児の母となりましたが、相変わらず困ったことがあると「せんせー」と連絡してきます。彼女の子どもも、また“外国ルーツの子ども”であるわけで、私は二世代に渡って彼女の成長を見守っています。

 

3.彼ら彼女らを支援する方法

学習支援の様子
学習支援の様子

 

ここまで読んで「私も外国ツールの子どもたちに教えてみたいな」と思った方、方法は色々あります。まずは、お住まいの地域で子ども向けの学習支援教室がないか探してみてください。大人向けのボランティア教室ではなく、小中学生を集めて日本語を教えたり、宿題のお手伝いをしたりしているボランティア教室が数多くあります。また、高校進学の支援をしているNPOもあります。

 

もし、得意な外国語があれば(ベトナム語やネパール語、中国語など)、自治体のホームページで“日本語指導員”(自治体によって名前は異なります)の募集がないか探してみてください。小中学校へ入ってきたばかりの子どもたちに、母語を使って学校生活や、サバイバル日本語を教えたりする役割です。また、教員免許をお持ちの場合は、私のように学校で非常勤講師として教科や日本語を教えるという道もあります。私自身は都立高校で教えながら、文京区で子どもの日本語教室を仲間と開いています。お住まいの地域にそういった教室がなければ、アークで出会った受講生といっしょに自分たちで教室を立ち上げるのもいいでしょう。

 

彼らが抱える困難は多く、支えきれずに悲しい思いをする事もありますが、進学、就職などを一つずつ自分の力で乗り越え、日本社会で成長していく姿を見守れることは何よりも楽しいです。

 

皆さんも、外国ルーツの子どもに日本語を教えてみませんか?

 

 

公立高校 国語科 講師 坂本 昌代