No.154 グリーティングカード | 日本語教師養成講座のアークアカデミー

No.154 グリーティングカード

2022/02/08

年が明けると早々に、今年の春節はいつだったかとチェックする。台湾の友人や知り合いにグリーティングカードを送るためだ。今年は2月1日の火曜日が「元旦」だった。当然ながら、学生たちは母国のお正月に「心ここにあらず」といった状態になる。そして、教師は「母国を離れているのだから仕方がない」と、いつもより寛大になる。昨今の状況を思えば「お正月くらいは…」と。


考えてみれば、日本のように1月1日にお正月を迎えるのは、アジアでは少数派。ここは授業冒頭で、学生と思いを同じくして新年のあいさつから始めようと思い立った。中国語の「新年好」に続いて、ベトナム語。現地で1年半暮らしていたにもかかわらず、ろくに話せないのであるが、このフレーズは現地でよく聞き覚えていた。「チュックムン ナムモイ」。女子学生に「今のわかった?」と恐る恐る聞くと、「はい、もちろん!」と満面の笑みで言う。思いは通じたようでホッとした。


ところで、グリーティングカードを送る際に、郵便局でちょっとしたアクシデントがあった。カードは5通。私はいつも封筒に「84円切手」を貼り、不足分を窓口で支払うことにしている。日本の切手を楽しみにしてくれる人もいるからだ。その日は、63円の切手シート1枚と、郵便ハガキ5枚も購入した。たしか台湾までの送料は「90円」。支払いはこれくらいかなと、財布から千円札を出そうとしたとき、窓口の男性局員が笑顔で言った。「3780円です」「え?」「3780円です」。思わず「えーっ!」と声が出たが、担当者は何が「えーっ!」なのか、まったく気がついていないようだ。


「あのー、いいですか。私がお願いしたのは…」と、小さな子どもを諭すようにゆっくりと、目の前の状況を説明すると、ようやく彼は「あ!」と気づいた。が、「あー、間違えちゃいましたね」と対応がとても軽い。彼が計算し直した1000円弱を払って窓口を離れたものの、ふと不安がよぎる。「この送料は正しいのか」という深い疑念である。私は領収書を改めて確認すべく、局内の椅子に座ってスマホで台湾までの送料を調べた。そして、領収書を見る…やはり間違っているではないか。


窓口の彼は1通につき「88円」で計算しているのだ。なぜ中途半端に88円なのか。送料の一覧を見れば「90円」だとわかるだろうに…。半ば呆れつつ、私は再び窓口へ。すると、彼は私を見て「あ、違ってましたよね」と、ビックリするほど軽く言う。まるで「テヘ」くらいに。「…よね、って?」と思いながら、ただ無事に私のカードが友人たちの元に届いてくれることを祈ったのであった。


あるクラスで会話授業を担当しているが、今ちょうど「謝罪」がテーマ。窓口の彼は、きっと朝から目が回るほど忙しかったに違いない。そんなふうに考えてはみるが、やはり何かが違うような気がする。「相手に伝わる謝罪とは?」を考えるにつけ、反面教師としてあの一コマを思い出す。