No.173 金曜日のお楽しみ
2023/07/05
学校は6月末から7月9日まで「夏休み」だ。8月にまた「お盆休み」があるのだが、日本留学試験や日本語能力試験、そして急な暑さで疲れ気味の学生たちにとっては、うれしい中休みである。だが、留学クラスと準備教育課程ではカリキュラムが異なるため、後者は休みに入るのが1週間ほど遅い。圧倒的多数である留学クラスの学生がいない校内は静かで、準備教育課程の学生たちは「どうして、私たちだけ?」と不満げに聞いてくる。「このクラスが特別なクラスだから!」などと返すが、納得している様子もなく、彼らは「まあ、しかたない」という表情で1週間ほどを過ごしていた。
その夏休み中に、恒例のベトナム訪日後研修が始まった。今回、私は金曜日にエントリー。6月最終日から7月末まで、計5回登板する。去年はまだコロナ禍の影響もあり、8月中旬から9月に行われたが、今年はほぼコロナ前に戻ったようだ。ただし、授業時間は15分の時差を設け、午前は9時開始と9時15分開始、午後は13時10分開始と13時25分開始として、混雑を避けている。
この研修では、私は午前と午後を通して授業を担当。しかも、朝5時前の起床だ。最近、すっかり疲れやすくなった身としては、いつも以上に体調管理と栄養補給に気をつけねば、といったところである。そのためには、目的地の駅内のパン屋さんでの朝ごはんは、今年も必須である。物価上昇の昨今、とりあえず、昨年からモーニングセットの価格が変わっていないことを確認してホッとした。
さて、今回も初回の授業冒頭で、簡単に自己紹介をしてもらった。趣味は「歌を聴くこと」「小説を読むこと」「料理を作ること」などが多かったが、「笛を吹くことです」と言う男性も。ベトナムの男性といえば、「女性にモテる」という理由でギターを弾く人が多いが、「笛」は初めて聞いた。動画サイトにアップしているとのことで、ちょっとだけ視聴することに。画面に美しい音色でベトナムの曲を奏でる姿が映ると、みんなから歓声が上がった。彼はピアノもギターも弾けるという。女性にモテる条件も、ギターだけの時代は終わり、「ハイブリッドの時代」が来ているのかもしれない。
今回の研修では、うれしいサプライズもあった。準備教育課程の1期生にあたる「19A組(=2019年秋開講)」の卒業生と再会できたのだ。たまたま彼女が進学したのが私の母校ということもあり、「どうしているかなあ」と気になっていた学生の一人。最近も、同僚教師と「会いたいね」と話題にしていた学生なのである。その彼女が、研修の事務局にアルバイトとして、今年初めて「金曜日だけ」来ているのだという。なんという偶然。コロナ禍の大学進学でいろいろ苦労もあっただろうが、彼女の笑顔からは充実した大学生活が垣間見える。聞いてみたいことがいろいろある。暑さにぐったりする日が続くけれど、今年は「可愛い後輩」のおかげで、週1回のプチ出張に楽しみが増えた。